第0色 出会い ページ1
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中庭から覗く星空の下で、その子は本を抱えて佇んでいた。
月の光を受けて輝く、ウェーブがかったプラチナブロンド。
青いローブはその子がレイブンクロー生であることを表していて、後ろ姿からでも、どれだけ知恵持つ魔法使いかが見て取れた。
星を見ているのだろうか。
それなら天文学の教室とか、城で一番高い天文の塔に登って眺めていればいいのに。そちらの方が空気が澄んでいてよく見える。
その子はハリーの視線にも気付かないらしく、微動だにしない。彫像だと言われたら信じてしまいそうだ。
──何してるんだろう。夕食の時間はとっくに始まってるのに……。
「ねえ、ご飯はいいの？」
ハリーがそう声をかけると、大きく肩を震わせてこちらを振り向く。
深い青色の瞳。
左目は前髪で隠されて見えないけれど、長い睫毛でふちどられた両眼には、驚きと怯えの色がにじんでいた。
ずり落ちた丸眼鏡を指で押し上げ、中庭の向こうに走っていく。本を落としてしまったのにも気付かずに。
再び声をかけようにももう行ってしまったし、向こうの廊下は混んでいて、プラチナブロンドでさえ見えなかった。
「ハリー？ どうしたんだよ、こんなところで」
「何も。だけど、ちょっと気になって……」
「何がさ？」
「レイブンクローの子だよ。僕らと同じくらいの歳で、ひとりで、これを持って、中庭で空を見てた」
大広間に入りながら本を見せ、ロンに言えば、彼は数秒首を傾げたあとに「あっ！」と大きく声を上げた。周囲が一瞬静まったが、すぐに元の喧騒を取り戻す。
「その子、僕も見たことある！」
「じゃあ、誰か知ってる？」
「呪われた子だよ。あんまり関わらない方がいいよ」
「どうして？」
「呪われるからさ」
ロンの言うことは要領を得なかった。ハリーはどうしても彼のことが気になって、何度もしつこくロンに質問をした。
「名前は知ってる？ 何年生？」
「一年生だよ。最初の方で組み分けされてたから。名前は……ええっと、確か、そう」
夕食のステーキを頬張りながら、ロンは空中でフォークをさまよわせる。
「エルトダウン。なんとか、エルトダウンだよ」
「それじゃ、ファーストネームは覚えてないの？」
「うん。変わった名前だったのは覚えてるけど」
ハリーはデザートの糖蜜パイに手を伸ばす。
少なくとも、これであの子が僕の見たゴーストだって線はなくなったな。
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作成日時：2020年3月19日 16時
