ryt.s ページ17
「 ねえ、作間くん 」
作『 Aさん? なにかあった? 』
「 あの本、戻したいんだけど手が届かなくて 」
作『 またあ? 』
そう言って、カウンターで本を読む作間くんを呼び出しては
本当は頑張れば届く高さなのに
彼に手伝ってもらうのが定番になってきている
作『 本当は届くんでしょ? 』
「 うん、頑張ればね 」
作『 なら、自分やりなさい 』
「 いてっ 」
作間くんは私の頭を
軽くチョップする手でポコッと叩くと
スタスタとカウンターへ戻ってしまった
私はその背中を見つめて
彼がカウンターへ座るのを確認すると
また目の前にある大量の本たちを片付け始める
「 つまんないなあ、もう 」
作『 こら、Aさん、声が大きい 』
「 ご〜〜め〜〜ん〜〜! 」
どうやら心の声が漏れていたようで
作間くんは小声で
私だけに聞こえるように注意してくる
私も、口パクで謝ると
作間くんはまた読んでいた本に目を戻した
「 終わりました 」
作『 お疲れさま 』
「 作間くんは委員会、何時まで? 」
作『 閉館まで 』
「 ええっ、あと1時間もあるじゃん 」
作『 僕、本好きだからあっという間 』
「 …私もなんか読もうかな 」
作『 そう言って、何冊もオススメしてるのに、読むの辞めちゃうのはAさんだよ? 』
「 むう、だって活字苦手なんだもん 」
作『 …ハア、なんで図書委員なのさ…… 』
「 作間くんが図書委員だから 」
作『 ……そうだったね、ごめんごめん 』
最初は私がそう言えばオドオドしてたのに
最近では流されてしまいがちになって
私はちょっと危機感を持ち始めている
「 ハア〜、あと1時間かよ〜 」
作『 …僕、鍵返しとくから帰ってもいいよ 』
「 ……作間くんはバカだなあ、本当に 」
作『 …… 』
「 おっと、なんでもないよ、ほら、本を読んだ方がいいよ 」
作間くんは何た言いたげな顔をすると
なにかをぼそっと呟いて
また本に目を落としてしまったので
私はおおきなため息をついて立ち上がる
はらぺこあおむしでも読もうかな、と
児童文学作品が置いてあるコーナーに向かった
そこからぼーっとしていたら
いつの間にか意識が飛んでいた
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作者名:shion. | 作成日時:2019年10月11日 20時