“元”及川先輩のファンです【花巻貴大】

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(Aside)



その日、ラーメンを食べ終わった後、私は「送るよ」と言ってくれた花巻先輩の申し出をきっぱり断り、その手から荷物を取ってひとりで帰った。


きょとんとした顔の花巻先輩を置いて。


ごめんなさい、でもちょっと耐えられなくて。



『仲良くなりたい』だとか、

頭撫でてくれたのとか、

荷物持ってくれたのとか、

夜ご飯誘ってくれたのとか、

シュークリームのカップル割のこととか、



……本当に、なんでも無かったんですね。


私は勘違いして舞い上がってました。



そうだよね。

私なんかより可愛い三年生、いっぱいいるよね。



◇



花巻先輩と買い出しに行って以来、私はなんとなく先輩との距離を感じていた。

距離を置いてしまっているのは多分私なんだけど、距離の詰めかたももうよく分からないし……。


「もーA、着替えるの遅すぎ〜」

「あ！ ごめんごめん」


あぁ、また考え事してた。

体育の授業の後、更衣室にいるときでさえ頭の中は花巻先輩のことでいっぱい。


慌てて着替えていると、がちゃ、と更衣室のドアが開いて、顔を覗かせた他クラスのお友達。

目が合うと、「お、いたいた。Aちゃん」と近付いてきて、ぱしん、と顔の前で手を合わせた。


「五限体育なんだけどさー、体操着貸してくれない？」


「忘れちゃって……」と眉を下げて首を傾げる。


「着たやつで大丈夫なら」

「全然いい！ ありがとう！」


私は今脱いだばかりの体操着を畳んで、袋に入れて手渡した。

ぺこりと頭を下げて急ぎ足で更衣室を出ていくその子。


「A、あの子と仲良かったっけ？」


そう、それ、私も思ってた。

人が沢山いたはずの更衣室には、もう私たち二人だけ。


「全然……。数回話したかなってくらい」

「だよね。変なの」


みーちゃんの言葉に頷き、ワイシャツを取ろうと棚に手を伸ばし、


そして、やっと気がついた。


「……、え？」




ない。

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