“元”及川先輩のファンです【花巻貴大】

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(国見side)



実を言うと、突き指したのは本当だけど、左手なら自分でテーピングできるし、わざわざ頼む必要も無い。

ただこの人がどんな人なのか知りたくて俺なりに考えた結果、テーピングを頼んでみようと思っただけ。


正直な感想は、“テーピング下手だなぁ”くらいなものだった。

手際は悪いし、指のテーピングくらい本を見なくても出来ないとマネージャーとして失格な気がする。



けど、いちいち「痛くない？」とか「大丈夫？」とか訊きながら、ゆっくり、丁寧にテープを巻く彼女の人の良さはよく分かった。


「ありがとうございました」

「ごめんね、あんまり慣れてなくて」


丁寧にやってくれたにも関わらず、巻かれてから数秒もしないうちに剥がれかけてきたテープの端。

俺はそれに彼女が気付かないうちに、さっさとその場を離れた。



少し離れたところで、改めて松浦さんの巻いたテープを見た。


やっぱり下手くそ。俺の方がまだ上手い。


頭の中でつらつらと批評を述べる。



それでも自分で巻き直す気にはならなかった。

面倒だし、折角あんなに丁寧に巻いてもらったから。


「お、それ松浦さんがやったやつ？」


俺の肩の後ろから、俺の手元を覗き込んだのは花巻さん。

そうです、これ、とテーピングされた指を見せると、花巻さんは「ぶは、」と笑った。


「なんつーか……下手だな」

「ですね」


率直な感想。それには俺も同意。

花巻さんだってこれよりは綺麗にできるはず。


「でもあいつ、水泳部のマネージャーだろ？」

「水泳部ってテーピングのイメージ無いですけどね」

「……そっか、確かに」


俺の言葉に頷いて、微妙な顔で彼女の施したテーピングを眺める。


口では「マジで下手だな」なんて言ってるけど、その顔は花巻さんらしくない優しい笑みを浮かべていた。




______




こんにちは、作者の殊梨です！


少し文字数が余ったのでこの場を借りてご挨拶を……。



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