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(Aside)
矢巾くんが体育館に来たあたりから、ぽつぽつと体育館に人が増え始めた。
その分、私に向けられる視線も増える。
コミュ障な私は、矢巾くんの後ろから控えめに挨拶するだけ。
誰だよ、って絶対思われてるよね。……怖い。
早速少しだけ今日来てしまったことを後悔していると耳に入ってきた、ガタガタと騒がしい足音と騒ぐ声。
三年生だ。
四、五人でわいわいと楽しそうに話しながら体育館に入ってきた彼らの中に、及川先輩の姿を捉えた。
シューズに履き替えて立ち上がった及川先輩と目が合う。
ドキ、と胸が鳴って、顔がぽわぽわと熱くなる。
どうやら私を認識してくれたらしい及川先輩は、やたらニコニコしながらこちらに歩いてきた。
どんどん距離が詰まる。
胸が、高鳴る。
「松浦さん、であってる?」
「はい。松浦Aです、よろしくお願いします……!」
イケボ、と言っても遜色ない声で私の名前を呼んだ及川先輩に動揺しまくってしまった私は、ぎぎぎ、と錆びた機械のような動きで頭を下げた。
間近で聞くその声はとってもかっこよくて、芯があってしっかりしてて……。
何より顔が綺麗。
恋をしてるのは花巻先輩にだけど、及川先輩だって大好きな憧れの先輩なのだ。
私の乙女心がきゃあきゃあと騒ぐ。
よろしく、と笑顔で返事をしてくれた及川先輩は、少しだけ首を傾げて言った。
「とりあえず今日は見学、ってことでオーケー?」
「そのつもりです」
なんとか質問に答えるも、目線はうろうろ。
及川先輩の顔をちらっと盗み見て、勝手に顔を熱くする。
本当に、何してても絵になるなぁ……。
◇
少しだけ暑い五月の体育館に、掛け声がこだまする。
シューズの擦れる音とボールの弾む音をBGMに、私は用意されたパイプ椅子に腰かけて部活の様子を見ていた。
なるべく全体を見るようにはしているけれど、気付いたら目で追ってしまうのはもちろん、花巻先輩。
ボールをレシーブして、跳んで、打って。
普段の先輩もかっこいいけど、バレーしてるときはもっとかっこいい……。
そして私はまた、花巻先輩という人間に引きずり込まれていく。
悲しくなるほど単純である。
そうしているうちに気付けば十二時。
きつい午前練を終えた部員の皆さんは、それぞれ弁当を持って座ったり、体育館の外に出ていったりする。
練習は一日中あるそうなのだけれど、弁当を持ってきていない私は、午前中で切り上げさせてもらうことにした。
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殊梨(プロフ) - 冷凍庫さん» とっても嬉しいです、是非お願いしますm(._.)m (2019年10月3日 21時) (レス) id: a11fe8d0dd (このIDを非表示/違反報告)
冷凍庫 - イメ画を描いてもいいですか? (2019年10月2日 18時) (レス) id: 29ebb411a4 (このIDを非表示/違反報告)
殊梨(プロフ) - 黒伸☆〜(ゝ。∂)さん» 矢巾くんのポジション、どうするか凄く悩んだのでそう言っていただけてとても嬉しいです!ありがとうございます(_ _) (2019年8月29日 22時) (レス) id: 653275ba5c (このIDを非表示/違反報告)
黒伸☆〜(ゝ。∂)(プロフ) - コメント失礼します。主人公ちゃんとマッキーと矢巾んの三角関係が可愛くて大好きです!ああ!!3人とも幸せになれ!!と思いながら見てます!これからも頑張って下さい! (2019年8月29日 20時) (レス) id: d24404e68a (このIDを非表示/違反報告)
殊梨(プロフ) - 声優LOVEさん» コメントありがとうございます! わー嬉しいです(*/∀\*)頑張りますね〜! (2019年8月29日 19時) (レス) id: 653275ba5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殊梨 | 作成日時:2019年8月17日 23時