“元”及川先輩のファンです【花巻貴大】

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(花巻side)


六時過ぎ。



ギャラリーにいた女子達は、塾やら何やらで半数ほどに減っていた。

あと１０分もすれば、もう半分くらい減るだろう。



あの二人____松浦と花崎____はまだギャラリーで喋ったり笑いあったりしていたが、５分の休憩に入るとそれぞれ荷物を持って何やら帰る素振りを見せ始めた。

案の定すぐにギャラリーから姿を消し、体育館の隅の小さなドアから出ていく。


「あ、俺ちょっとトイレ行ってくるわ」

「５分でちゃんと戻って来いよー」


松川の言葉におうと返し、シューズのままサンダルを突っ掛けて体育館を出る。

水道の所で話している二人に声を掛けようとして、ふと思い止まった。



年上の男子、苦手なんだっけか。


……ならあんまり話しかけない方がいいよな。


「あの」


考えた結果、控えめに声をかけることにした。

はい、と振り向いた彼女の顔が、分かりやすく一瞬で強張った。


「金、直接渡せなくてごめん。ありがとう」


さっき考えておいた、なるべく簡潔にまとめた言葉をそのまま伝える。


「いえいえ。私こそ勝手なことしてすみませんでした」


礼儀正しく頭を下げた彼女。

本当は名前だって彼女の口から直接聞きたい。


でも、どうやら俺のこと苦手らしいから。


「……じゃ」


彼女が顔を上げる前に、さっさとその場を離れた。

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