ハーシェルの連星 (ページ4)

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「Aもピアス空けたの？」

「っ、」

高2のある日の放課後、教室で二人きり。

何気なく後ろから耳に触れられ、異様に心臓が跳ね上がったのを覚えてる。

…兄妹なのに。

「…龍也が空けてて、かっこいいなって思って…」

真っ直ぐ、目を見てそう告げたら、

「痛くなかった？」

優しい兄らしい台詞が返ってきた。

「…ちょっとだけ、だけど龍也と一緒だから」

「……そ、」

最近の龍也はすぐ目を逸らす。

「香水もね、結局、よく分かんなくて…、

龍也と同じブランドの、レディースのにした…」

「……」

それにどことなく、伏し目がちだ。

「……帰るよ」

シンプルにそれだけを告げられ、

「……え、」

初めて手を引かれた。

人目とか、何も気にしないで。

龍也の手は意外と体温があって温かかった。

身体は男の人にしては小柄で華奢だけど、手が硬くて大きいなって。

双子なのにやっぱり違う。

……それに近い。

今までは1メートル開けてた距離が、手を繋いでいるからか、その半分にも縮まっている。

「ごめん、」

慣れないから肩がぶつかっちゃって、

「……」

怒ってないかな？って、ちらっと顔色を伺えば、

「平気だよ」

穏やかで静かな波のような返事が寄せられる。

僅か数分後、

「あ、ごめん、」

また、ぶつかる。

その度に龍也の肩はガッチリしてて、男の人なんだって意識しちゃって。

それだけ、自分とは違う存在なんだと兄妹だけど、遠く感じてしまった。

「……平気だから」

ちょっとだけ龍也の声も揺れていた。