ハーシェルの連星 (ページ3)

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そしてそのまま、高校生になった。

ぼんやりしている私と違って、龍也は割と自意識がしっかりしていたから、

ファッションとかヘアスタイルとか、流行りを色々勉強して、こだわりを持つようになって。

「……いい匂い」

一緒に帰りながらついそう呟いてしまったのを覚えている。

「……」

変わらず返事はない。

「何かの香水？」

聞くとシンプルに、うんと頷く龍也。

「いいなー、私もなんかつけようかな」

「……」

「今度買い物行く時探してみよう」

私も龍也みたいにオシャレになりたい。

そんな私の先を行くよう、龍也はますます派手になっていった。

「え、ピアス空けるの？」

「そろそろね」

そんな龍也のことを、一部の友人はチャラいと言うようになった。

だけど女の子受けは良くって。

「……龍也って、結構モテるみたいだね」

何がどうであっても、龍也は龍也であることには変わらない。

どんなに見た目が変わっても、女の子に対してあまり距離を詰めないでいるのを、一緒にいる私は誰よりも知っていた。

だけどつい、

思ったままにそう口にしてしまったのも、確か二人きりでの帰り道だった。

「………ふーん」

1メートルの距離を取りながら、普段通りの下校道。

龍也が腕まくりをした時に浮き出たその筋が、女の自分には無いものだと気付く。

軽くセットした毛先、

シンプルなピアス、

それがここまで似合う男の人は、周りには少ない。

龍也がチャラいわけではなく、龍也が人よりも、そういう飾りが似合う。

だからその武器を活かしているだけ。

龍也のことを美形、俗にいうイケメンだと思ったのはそれが初めてだった。

「………龍也、かっこいいもんね」

ぼそっと、思っていたことをつい口に。

普通は中々兄に言わないような台詞だ。

どう思われたいとか何の意図もなかったのに、

突然立ち止まった龍也に

「…A、」

いつもみたいに名前を呼ばれて。

「ありがと」

何気ないニコッとした笑顔と静かな台詞に、

やけにドキッとしたことを覚えている。

低い声と三日月に上がった目が心を擽ぐる。

きっと後々、いつ龍也を好きだと自覚出来たかを聞かれたら、

この時と答えるのが正解なんだと思う。