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お風呂上がり、
二階の部屋の前でぼんやり立ち止まる。
「……お兄ちゃん、か」
昨日はこの廊下で、
今日はこの部屋の中で、
甘い恋人みたいな口付けをしてくれたのに、
もう急に遠く感じる。
大好きだなんて恋焦がれてるのはやっぱり私だけなんだろうか。
龍也はもう真っ当なお兄ちゃんになって、
私とはそんなこと、してくれなくなるのだろうか。
一人佇むように壁を眺めていた背後から、
「…………どうしたの？」
濡れ髪姿のまま龍也が現れる。
私の次にお風呂に入ったのにもう出たなんて、
龍也はほんと昔からお風呂が早い。
「……早く部屋戻って乾かしな、風邪引くから」
肩にポンと触れられる。
その熱だけでなんだか心地良いと思ってしまう。
くすぐったくて。
「……なんか、お兄ちゃんみたい」
「うん……お兄ちゃんじゃん」
その通り、何も間違ってない。
だけどなんだかやるせない。
「……」
そのまま、ぎこちない静けさが、
ひんやりとした空気を生み出した時、
寂しさや、離れたくなくないという気持ちが湧き上がって、
迫るような焦りの中、
「………龍也の部屋に行って乾かしちゃだめ？」
タオルを被ったまま近付いて見つめ上げたのに、
「……ごめん、今日は俺早く寝たい」
「……そっか、ごめんね」
「ううん、おやすみ」
優しいトーン。
だけど何の余韻も残さずにドアを閉められる。
「…………、」
どちらのものとも言えない湯気と、
行き場のない感傷が廊下に漂った。
.
兄に恋してる。
世界一近いのに、時に宇宙一遠く感じる。
何億年先の未来では、
私たち、生まれ変わって今とは違う別々の人間になって巡り会えているかも知れない。
そしたらこんな切なさ、感じなかったのかな。
でも、それならいっそ、
この時代に、この世界で、
今と同じ両親の元、
あとちょっとの運命の悪戯で、龍也と同じ人間として生まれたかった。
二人それぞれではなく、
二人で、一つの命を生きたかった。
そしたら寸分の違いもなく、
一緒だって思えるのに。
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はるか(プロフ) - 読ませていただきました。切なくて、どきどきして、胸がいっぱいになるお話でした！優しいし龍也おにいちゃんすごくすきです！素敵な作品をありがとうございましたっ (2019年7月28日 4時) (
レス) id: 2fad28cd3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：踊れる人大好き芸人
| 作成日時：2018年9月14日 20時
