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第8話 そっと心は秘めたまま ページ10
「おい、立てるか?」
やっと国広の声で
恐怖で停止していた頭が動いた
「う、ん···」
私は強がっていつの間にか抜かしていた
重い腰を自力で上げようとした
しかし思う様に上がらない
「····ふっ」
見かねた国広が私をそのまま担いだ
「ちょっ!?」
当然私はあわふためく
「いいから大人しくしていろ」
···意地悪
「ねえ、国広あれ何だったの?」
あの老婆の事が頭を離れない
「···お前は小さかったから覚えてないのか」
覚えて、ない?
「あれは···この辺に住む『山姥』だ」
山姥って確か
「妖怪?」
怪談物の本で読んだ記憶があった
「あぁ、それでお前は···あれと約束してしまったんだ」
約束···"ｼﾞｻﾞｯ"
先日の様に頭が痛んだ
「っ大丈夫か!?」
国広も異変を察知する
「へー、き多分···」
そして異様な眠気が襲ってきた
「···もう大丈夫だから安心して寝ろ」
確かにもう大丈夫そうだった
少なくとも国広が居ればあの山姥は私に
近付かない
いや近付けない気がする
私は国広に身体を預けてそのまま寝た
「絶対に俺が守ってやるから···」
だから知らない
国広が私を布団に寝かせた時
「······」
私のおでこにそっと口付けした事も
国広自身の心もまだ何も知らなかった
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作者名：里樹 | 作成日時：2019年8月24日 1時
