検索窓
今日:3 hit、昨日:43 hit、合計:29,203 hit

. ページ17

桃side〜





それから俺は、安い家賃という事だけで決めた古いアパートで暮らし始めた。








しずと暮らしていたマンションに近いところ。







元々生活リズムが同じな訳では無かったから、会うことはないと思うし、だなんて決めた物件だけど、何よりも俺がしずから離れられなかった証拠でもある。






「…っふ、はぁ、」








普通に生活をしていても呼吸が苦しくなる時間が増えて、毎日何だか怠くって。






キッチンに立ってご飯を作っていたんだけど、猛烈な身体中の痛みに耐えきれなくなって、そのまま倒れるように横になった。








“ほら、そんな所で寝たら、風邪引いちゃうよ、もぉ、”









「…ぁれ、」







何処からかそんな懐かしい声が聞こえてきて、何かを考えるより先に涙が零れて床に落ちていく。






そっか。俺は、寂しかったんだな。


なんてやっと自覚して。








急にふわ、と身体が浮く感覚がして、最初はしずに抱き上げられたのかと思った。










ピーポーピーポー








遠くで聞こえた救急車の音。










…あれ、いま俺。どうなったんだっけ。











「…しめ、_______________しめっ、!」










ぽろぽろと涙が溢れているのも構わずに、しずがストレッチャーに乗せられた俺に声を掛けているの、がぼやぼやした視界に入ってきた。








「っふ、…なにないてんの、」







辛くって、苦しくて、痛くて。

でもなんだかほんの少しだけ幸せで。








最期に見れた景色にしずがいてくれて良かった。








ねぇ、しず。最期に、最期だから一つだけワガママ言わせて?











「…ぉれ、の事、………わすれて?」

.→←.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (79 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
167人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

うらの(プロフ) - 初めまして。作品があまりに素敵で感動しました。随所に心がまっすぐなmtさん心がきれいなmcさんの気持ちが見れてとても心が暖かくなりました。素敵な作品をありがとうございました。 (9月22日 23時) (レス) @page50 id: 188a7a4fbd (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:紗彩 | 作成日時:2022年1月21日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。