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桃side〜
それから俺は、安い家賃という事だけで決めた古いアパートで暮らし始めた。
しずと暮らしていたマンションに近いところ。
元々生活リズムが同じな訳では無かったから、会うことはないと思うし、だなんて決めた物件だけど、何よりも俺がしずから離れられなかった証拠でもある。
「…っふ、はぁ、」
普通に生活をしていても呼吸が苦しくなる時間が増えて、毎日何だか怠くって。
キッチンに立ってご飯を作っていたんだけど、猛烈な身体中の痛みに耐えきれなくなって、そのまま倒れるように横になった。
“ほら、そんな所で寝たら、風邪引いちゃうよ、もぉ、”
「…ぁれ、」
何処からかそんな懐かしい声が聞こえてきて、何かを考えるより先に涙が零れて床に落ちていく。
そっか。俺は、寂しかったんだな。
なんてやっと自覚して。
急にふわ、と身体が浮く感覚がして、最初はしずに抱き上げられたのかと思った。
ピーポーピーポー
遠くで聞こえた救急車の音。
…あれ、いま俺。どうなったんだっけ。
「…しめ、_______________しめっ、!」
ぽろぽろと涙が溢れているのも構わずに、しずがストレッチャーに乗せられた俺に声を掛けているの、がぼやぼやした視界に入ってきた。
「っふ、…なにないてんの、」
辛くって、苦しくて、痛くて。
でもなんだかほんの少しだけ幸せで。
最期に見れた景色にしずがいてくれて良かった。
ねぇ、しず。最期に、最期だから一つだけワガママ言わせて?
「…ぉれ、の事、………わすれて?」
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うらの(プロフ) - 初めまして。作品があまりに素敵で感動しました。随所に心がまっすぐなmtさん心がきれいなmcさんの気持ちが見れてとても心が暖かくなりました。素敵な作品をありがとうございました。 (9月22日 23時) (レス) @page50 id: 188a7a4fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紗彩 | 作成日時:2022年1月21日 0時