Prolog ページ1
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「ねぇ、げんた、」
小学四年生になった夏休みのある一夜のこと。
2人だけで施設を抜け出し、近くの公園で星空をジャングルジムの一番上で寝転がりながら二人で眺めていた時。
急に海斗が俺の名前を呼んだ。
「なんだよ?…急にどうした?」
「…元太ってさ、“ソラノムコウ”に何があるか知ってる?」
「は?なんだよそれ、…ファンタジー?」
「違う!俺の、ばあちゃんが言ってたんだ、“ソラノムコウ”には、…僕らの知らない世界があるって。」
「…はぁ?なんじゃそれ、」
ケラケラ笑う俺を、不機嫌そうに見つめる海斗。
「本当なんだよ?そこにはさ、お星様になった僕のママとパパが居るんだって、」
ママとパパ、か。
俺は、物心ついた時から施設暮しだから、両親の事も、ばあちゃんも。家族の事はなんにも分からない。
喩え亡くなってるとしても、海斗には両親との記憶がある。
そんな海斗が何だか少し羨ましくなって、返事が出来なくなった俺は黙って空を見つめた。
「ばぁちゃんが言うにはさ……もし、死んだ時にね?一回だけ、この世界の人を“ソラノムコウ”に呼んで、会うことが出来るんだって、」
「…へぇ、」
「俺が、もし元太より先に死んだらさ、呼ぶ人、元太にしようと思ってるんだ、」
夜空を見つめながらそう言った海斗の横顔は何だか儚くて。今にも消えてなくなりそう。
「…なんだよそれ、そんな縁起悪い事言うなって、」
「…ふ、そぉだよね、ごめん、」
「もし俺がケイより先に死んだら、ケイの事“ソラノムコウ”に呼ぶから、」
「…うん、ぁりがと、」
約束!なんて大きな声で、小指を絡めて指切りげんまん。
あの頃の俺らは凄く凄く幸せで。
そんな幸せな日々がずっと、ずっと続くと思ってた。
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うらの(プロフ) - 初めまして。作品があまりに素敵で感動しました。随所に心がまっすぐなmtさん心がきれいなmcさんの気持ちが見れてとても心が暖かくなりました。素敵な作品をありがとうございました。 (9月22日 23時) (レス) @page50 id: 188a7a4fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紗彩 | 作成日時:2022年1月21日 0時