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久しぶりに入った施設は何だか酷く懐かしい匂いがして。
泣きそうになるのを必死に堪える。
「海斗くん、元太くん来てくれたよ?」
白い箱に納まってしまった海斗に静かに手を合わせる。
ケイ、海斗、かいと。
目を瞑って思い出すのは海斗との楽しかった思い出ばかり。
なんで。気が付か無かったんだろう。もっと、もっと海斗と笑い合いたかった。
いつの間にか流れていた涙が、フローリングに落ちる。
「…げんた、」
「……かげ、」
懐かしい声に呼ばれて、ふと振り向けば、これまた懐かしい顔。
「っ、ひさしぶり、」
態とらしくちょっとだけ明るい声を出したかげはそう言うと、少しだけ微笑んだ。
「今もここで暮らしてるの?」
「うん。まぁ、今は施設の職員として働いてるよ、」
かげはそう言うと、泣きそうな目で静かに白い箱を見つめた。
「……海斗、どんくらい入院してたの?」
「…去年の夏頃かな、…施設暮らしも病気が理由で延長してもらったって言ってた、」
かげと海斗は、俺の二個上で今年で20歳。
本当は18歳になると施設から出なければ行けないんだけれど、そういう理由で海斗は施設で生活できる期間が延びていたんだ、なんて今更納得した。
海斗がいなくなってしまった今となってはもう、何もかも遅いのに。
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うらの(プロフ) - 初めまして。作品があまりに素敵で感動しました。随所に心がまっすぐなmtさん心がきれいなmcさんの気持ちが見れてとても心が暖かくなりました。素敵な作品をありがとうございました。 (9月22日 23時) (レス) @page50 id: 188a7a4fbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紗彩 | 作成日時:2022年1月21日 0時