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「あんのゴリラ姉貴騙したな……」
高校の最寄り駅から出てブツクサ言いながら歩く。そう、俺は姉貴に騙されたのだ。今日事故った電車なんて一本も無かった。お陰で二本早い電車に乗ることができたが、駅まで走ったので無駄な体力を使った気がする。
しかも、駅員さんに聞いてその事実を知った瞬間、あのゴリラから
『やーい騙されてやんの。バーカバーカwww』
というメッセージが届いたのだ。ふざけんなゴリラ。まじ卍だよ。仕返しと言わんばかりにゴリラのスタンプを連打して送ってやった。十回ぐらい。すぐさま既読が付いたが、何も返されなかった。つまり既読スルー。無反応が一番恐いとはこの事かなと思った。
そんなことを考えながら歩いていると、ドンッと誰かに背中を叩かれる。
「A、おはよ！」
「お、健ちゃん。おはよ！」
同級生の奴だった。
学校に着くとほぼ毎日と言っていいほど誰かが挨拶してくれる。
それは先生だったり、友達だったり、先輩・後輩だったり色んな人だ。
今日はクラスメイトで同じ班の新山健介が俺と一緒のタイミングで校門を潜ってきたのだ。
「今日はこの時間帯なのか。早いな」
「おう。いやーいつもより早く起きた俺。偉い！」
「普段が遅いだけだろ。遅刻ギリギリ常習犯」
「一切記憶にございませんなぁ」
言葉の最後に草が生えてそうな会話をしながら一緒に教室に向かう。この健ちゃんという人物とは特に仲がいいという訳ではないが、まぁ友達の一人という感じだ。
「おっはよー！」
ガラッと勢いよく扉を開け、教室に響きわたるような声で叫ぶ。室内には既に何人か生徒が来ていて、一瞬静かになったが皆笑顔で挨拶を返してくれた。
「朝からうるせー」
「相変わらずだな」
男友達数人から軽い口調でそんなことを言われる。何と思われようがどうでもいい。
【テンション高い中心人物】と言うのが俺の売りなのだから。
無論、周りはその事を認識してるし、咎めたり嫌な顔は誰もしないから問題ない。
「おいおいお前ら、そんなに褒めても何も出ねえぞ？」
「「褒めてない」」
「ハモらないで。悲しくなるよ」
なんて、男子高校生もよくやるような軽口を叩きながら俺は自分の席に行った。
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