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康｢……お疲れ｣
白い息と共にあの優しい声がフワッと空気に混ざる。
｢……なんでいるの？｣
そんな可愛げもないフレーズ、使いたくないけど口から思わず疑問が出てしまう。
康｢……今日バレンタインやし、Aちゃん絶対おるやろなぁ思て。
待ち伏せみたい、てか待ち伏せか、待ち伏せになってしもた。ごめんなぁ｣
切なそうに笑う康二くんに向かってブンブンと首を振る。
｢ごめん、
こういうの初めてでどういう反応が正解か分かんない、んだけど、
…………嬉しい……です｣
恥ずかしくて声がちっちゃくなっていくのも、また恥ずかしい。
かわいいなぁ、と呟く康二くんの声もまた恥ずかしくなる。
スンッの息を吸う音が隣から聞こえる。
康｢……この前さ、なんにもしてやれんくて、ごめんな。
そんなん気にせんで、とか、
よく頑張ったなぁ、とか言ってあげるのが正解だったと思うんやけど。
……Aちゃんの辛さとか、俺が分かりきることは絶対出来へん、とか思っちゃったら、
何にも言えんかった。
弱くて、ごめんな。｣
歩きながらでも、目が合わなくても、声の震えで康二くんが本気でそう言ってくれてることが分かる。
そんなこと、思わなくていいのに。
私が勝手に話しちゃったことなのに。
人が苦しんでた過去なんて、見ないふりして適当に流しちゃえばいいのに。
康二くんの優しさは、無駄な部分がない。まっすぐで強くて、燦々としている。
康二くんはいきなりピタッと足を止めた。
それに伴って私も止まる。
康二くんはパッとこちらを向いて、
、
康｢好きや｣
と言った。
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作成日時：2021年2月3日 23時
