melt【橙】 (ページ23)

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｢……ううん、なんでもない！ごめんね！眼鏡、……取るね｣

フレームにかける手が少し震えてる気がしてる。

久しぶりに眼鏡を通さずに見た世界は、一点の曇りもなく鮮やかだ。

康｢…………かわええ｣

どんな顔をしたらいいか分からない私を、そんな言葉と共にパチリとフレームに収める康二くん。

少し経つとちょっと休憩しよか、とさっきとは違うベンチに座る。

康｢めっちゃええ写真いっぱい撮れたわ！ありがとうなぁ！｣

いえいえ、と眼鏡をいつも通り掛けようとした。

その手をパシッと優しく掴む。

康｢変なこと言ってたらごめん、

それ、伊達やろ。｣

正直ビックリした。

店長にも誰にもバレてないし、言ってない。

康｢いや、ごめん、伊達でも全然いいんやけど、｣

と、康二くんはしどろもどろになっている。

康｢……かわいいから、顔隠れるの、もったいないな、って思って｣

えぇ俺キモっ、と長い指で顔を覆う。

……この人はなんでこんなに素直なんだろう。

考えてる言葉が、変なところを通らずに口からスっと出てくるんだろうな。

それでいて、その言葉たちは棘が無くて丸みを帯びていて温かい。誰かを絶対に傷つけない。

……康二くんには話してみようかな。

太陽のように色んなものを惹き寄せて、包み込んでくれるような優しさを纏っている気がする。

そう思わせる不思議な魅力がこの人にはある。