melt【橙】 (ページ11)

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康二さんとお話できたあの日からバタバタとする日が続いた。

というのも、ちょっと前に店長が試作で作った雪の結晶を乗せたスモアがインスタでプチバズり。

＃chocolateAstilbe ＃雪解けスモアなんてタグがついた投稿が日に日に増えていく。

チョコだけじゃなくてウチのお店自体についても褒めてくれてる投稿も多い。

嬉しいけどちょっと照れくさくて怖い。

噂が独り歩きしてこんなオシャレカフェになっちゃって、私がスタッフだったらガッカリされちゃうんじゃない？？

本当に誰か入ってくれないかな、なんて思いながらホワイトチョコの雪印を量産していく。

……お店には康二さんも目黒さんもなかなか訪れない。

お名前を知ってるお客様なんて他にいないので、勝手に友達のような距離感で来店を待ってしまう。

するとカランとドアが開く音がする。

康二さんたち、

ではなく、大学生っぽい女の子達が3人中に入ってきた。

語尾に音符が付きそうなくらい楽しげに、目を輝かせて入ってくる。

こういうの、嬉しい。このお店が幸せの元になれてるんだなって実感できる。

女の子たちの前に注文品のスモアやガトーショコラを置くと、わぁっと華やかな声が上がる。

客｢かわいい！今日で学校のテストが終わったんですけど、このお店をご褒美に皆で頑張ったんです！｣

パシャパシャと写真を撮り、いただきます！と頬張る。幸せそうなため息がこちらにも伝わるほど気持ちよく食べてくれた。

またもや、こういうの、嬉しい。

ご褒美なんだ、ここが。

人と接するのも上手くないし、接客苦手だと思ってたけど、いつのまにかこのお仕事が大好きだなぁ。

テーブルを拭きながらふふっとにやけてしまう。