Wild Side Ⅱ【BEASTARS】 (ページ7)

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Story 54　種間関係篇ページ7

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　そして季節は春へと変わり、チェリートン学園では卒業式が行われた。

　大人の都合で表向きはルイが一匹で食殺犯のリズに立ち向かい、代償で右足を失ったということになっている。スラックスの右裾からは時折義足の金属部分が覗き、それを見た獣は皆、痛々しいと言わんばかりに眉をひそめる。
　だがそんな視線にも関わらず、卒業生代表として大講堂の舞台に立つルイは堂々としていた。

「我々卒業生はこのチェリートン学園が母校であることを誇りにし、これからも全生物共存共栄を信条に生きていきます」

　挨拶を終えると、割れんばかりの拍手が鳴り響く。今年は本当にいろいろあった、と彼が席へと戻っていくのを目で追いながらAはため息をついた。だが、何にせよ彼は無事に戻ってきた。今はもう、それだけで十分だ。

＊

「ビル。次の部長はお前だ」

　『ルイせんぱい卒業おめでとう』と書かれたカードを添えた花束を差し出そうとしたビルは、思いがけないルイの言葉に数秒固まった。

「え、なんで？ ……あ、いや！ルイ先輩にはいろいろ面倒かけちゃった自覚があるんで、ビックリして……」

　本人だけではなく部員たちも驚いている。人選も人選だが、それ以前に『あの』ルイが彼に任せるとは思わなかったのだ。

「ネコ科に悪い奴はいない。バカだから」

　それはビル以外の部員に聞こえないくらいの小さい声だったが、Aの耳はしっかりと聞き取っていた。
　なんだそりゃ、と笑いそうになってから何となくシシ組で何かあったのだと察する。彼をここまで変えるような何かが。

「それじゃ……A、大丈夫か？」

　先程から黙りこくって俯いているAに気づいたルイが心配そうに声をかける。「大丈夫です」と答えたが堪えきれずに涙が溢れ、部員たちに驚かれた。

「えええ！？どうしたA！？」

「何かあったか！？」

　悲しいことではなかった。ただ、いろいろな出来事が起こっても時間だけは変わらずあっという間に過ぎていく。

「私……ルイ先輩にずっと憧れてました。今でもそうです。卒業、おめでとうございます……！」

　泣きながらも思いの丈をぶつけると、女子部員たちはもらい泣きしてしまった。男子部員たちは泣きそうになるのを必死に誤魔化している。
　そして、

「後を頼んだぞ。A」

　Aの頭に手を置いたルイはそこで初めて優しい笑みを見せた。