Wild Side Ⅱ【BEASTARS】 (ページ3)

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Story 50　種間関係篇ページ3

先生は母とどういう関係だったのか。聞ける日が来るのだろうか。訊ける勇気が自分にあるのだろうか。

「……それにしても意外ですよね。まさかレゴシ先輩が学校やめるなんて」

「あ……あー、そうだった忘れてた。はぁ……」

「先輩、落ち込んじゃいましたか」

「うーん……もう去年はいろいろありすぎたから今年は演劇部も平和になればいいんだけど」

「肉食と草食が別学になるかどうか、まだ決まってませんしね」

　去年、種族合同の部活休止を防ぐための反対運動が起こったものの、肝心の別学問題はどうなるか……。

「別学となると、演劇部の肩身も狭くなりそうなんだよね……」

「顧問の先生って、肉食の立場としてはそのことどう思ってんのかな」

　彼の考えていることは分からない。そもそも顧問といっても部活にも姿を見せない人だ。ワケありの部員が集まる演劇部の中で一番謎めいた存在といっていいかもしれない。

「ねえねえ、今朝のニュース観た！？」

「例のウサギのヒーローでしょ？すごいよね！」

「大型肉食獣倒すなんてかっこいい！」

　近くの席に座っていた草食の女子生徒たちが何やら話し始めると、他の席の獣も思い出したように『ウサギのヒーロー』について語り出した。

「骨肉麻薬(こつにくまやく)を売ってた奴らをボコったってさ！」

「これ、草食で革命起こせるんじゃないか？」

　ちなみに骨肉麻薬とはその名の通り草食獣の血液や骨の粉末を調合した麻薬で、食肉よりも罪悪感を伴わずに欲を発散できることから若い肉食獣の間で密かに流行っている薬だ。食肉をしないためというが、当然材料にされる草食獣の犠牲は少なくない。

　――正直、ボコり足りないけどね。

　と、話題にされている『ウサギのヒーロー』張本人のAは自分が倒した売人たちを思い出して静かにキレていた。

「次期ビースター候補じゃね？」

「私、もし会えたらサイン欲しいな～」

「あ、待てよ？もしかしたらこの学園にいたりして！」

　――いますよ、ここに。

　そう思いつつもAは我関せずを貫いた。知られたらきっと、ろくなことにならない。

　

　その日の放課後の部活は特に何事もなく進んだ。一つだけ変わったことといえばレゴシがいないことで、部員たちは彼が退学した理由をいろいろと予想していた。

「Aは何か知らないか？」

　ビルから問われたがAは首を横に振った。リズとの決闘のことは下手に話さないほうが懸命だろう。