Wild Side Ⅱ【BEASTARS】 (ページ2)

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Story 49　種間関係篇ページ2

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　新しい学期を迎えた朝の大食堂は、食殺事件の犯人が捕まった後とは思えないくらいに何の変哲もないものだった。

　ただひとつ、Aをのぞいて。

「……なんか、見られてる？」

「A先輩が可愛いからじゃないですか？」

「ありがとう。でも多分ピナくんと一緒だからだね」

　ちなみにピナは女癖が悪く、いわゆるプレイボーイ。Aに複雑な視線を送っているツノ持ちの女子の中には間違いなく彼の恋人もいるだろう。それも一匹や二匹どころではない。

　彼と食事をするのはこれで二度目だが、Aはむしろ以前よりも緊張感を抱いていた。尻尾を隠すために着ているジャケットについていつ突っ込まれるか身構えていたのだった。

「A先輩、制服にジャケットってなかなかトガってますね」

　――はい、キタ。

「あー、ちょっと肌寒いなーって」

　新しいスカートを買うまで着ているつもりだが校則違反だと咎められるだろうか、とAは考える。そうなると他に隠す手立てがない。

「そういえばA先輩が演劇部にスカウトされたのっていつでしたっけ？」

　また唐突な、と思いつつも「食殺事件が起こる一ヶ月前」とAは答える。

「って、ちょっと説明がアレだけど……だから他の部員と比べるとそこまで期間は長くないかな」

「へえ……びっくりした？」

「うん。『事情を抱えた獣だけが入れるワケありの部活』って聞いてたから、なんで私？ってなった」

　『殺獣鬼の絵を描いていたから』という理由ではない気がする、とAは考え込む。

「あの人、部員の事情とかどうやって調べてんだろ。どこまで知ってんのかな……怖」

　無意識な独り言に「たしかに怖いよね」とピナが同意する。

「顧問ってほんと何者なんですかね。あまり姿見かけないからネコ科ってことしか覚えてないし。あ、そういえば……」

　彼はここで周りに聞かれないように声をひそめた。

「シイラ先輩が話してたの聞いたんですけど、先生に乱暴されたって本当ですか？」

「乱暴？」

「なんか、胸ぐら掴まれてたとか」

　――あのことか。

「乱暴、ってほどでもないけど、ちょっと怖かったかな……あれ以来、私も避けるようにしてるけどね」

　母がどういった経緯で顧問に怪我させられたかまでは分からないが、彼がそれを面白がって話していたことははっきりと覚えている。