12月の初雪【月 島 蛍】

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来た道を戻り、駅に着いた頃には帰宅する人で溢れかえっている。

それは学生だったり、サラリーマンだったりと冬休みに入ってもいつもと変わらない。

ここで待ち合わせしてから約5時間が経った。

多分、そろそろ解散する。

お互い何も言わないけどそんな気がした。

別にいつでも会えるし、今日が特別な日のわけでもない。

だからいつ解散してもいいんだけど、どういうわけかまだ帰りたくないと思う自分がいる。

だけどプライド的にそれに気づかれたくなかった。

今日はもう解散してさっさと家で温まればいい。

バカは風邪ひかないらしいけど体調でも崩されたら面倒だ。

そう思い、切り上げようとした時。



「……雪だ！」



誰かが、そう言った。

声につられて空を見上げると、顔に冷たいものが降ってきて、それは白くてふわふわしたもので。

ハラハラと音もなく降るそれは4月のことを思い出した。



「わ……月島くん雪ですよ雪！」

「うわ……どおりで寒いわけだ」



初雪を見て白い吐息と共にはしゃぐ彼女。

そういえば、天気予報は雪だった気がする。

だけどまさか、このタイミングで降るとは思ってもいなかった。



「なんか、雪見ると月島くんと初めて会った日のことを思い出す」

「……そう」



理解できない思考回路の持ち主だけど、空を見上げながらそう呟いた彼女は、僕と同じことを考えていたようだ。

今年初めての初雪は佐藤Aの隣でだった。

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