妄想系ヤンデレ少女【田中龍之介】 (ページ3)

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でもこの握られてる手の感触とか、声とか、甘い匂いとか、そう考えると夢とは思えない。

しゃがみ込んだまま固まっているとようやく立ち上がった彼女は照れたようにモジモジとし始めた。

「あの……私、佐藤Aって言います」

「あ、ハイ」

「お、お名前聞いてもいいですか？」

「た、田中龍之介……」

「龍之介さん！？なんて男らしい名前！名が体を表すってこういうことを言うのね！」

……潔子さんの気持ちが少しだけわかった気がした。

こんだけグイグイ来られるのは嬉しい、だが！！

滅茶苦茶困るってことがわかったんだよ！！！

「そのジャージ……烏野ですか？」

「エッ」

「排球部なんですかぁ……きっとバレーしてる姿、素敵なんだろうな」

「……あの」

「って、ヤバ！もう行かなきゃ！」

細い手首についた腕時計を見た彼女は慌てたように落としたスクールバッグを拾う。

そして食べかけのパンも拾い上げたあと、長い髪を揺らして俺を見た。

「ほんっとうにすみませんでした！ではまた！」

「……ハイ」

小走りで去っていく彼女の後ろ姿を見つめる。

同時に夢心地だったこの空間に現実が訪れた。

「……やべっ、俺も朝練！！」