June bride.【岩 泉 一】

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___数日後。

岩泉との進展は特に無いまま、私は鏡の前に立っていた。

綺麗に巻かれた髪の毛に「せっかくだから」と薄くされた化粧。

今はまだ似合わないけれど……

もう少し大人になったら似合うだろうか。



「佐藤さん、準備できた？」

「あ、うん」

「おぉ……！凄い綺麗！やっぱり頼んでよかった！」



ノックの後、顔を出した写真部の部長はドレスを着た私を見て、べた褒めしてくれた。

耳元で揺れたイヤリングが少しくすぐったい。



「よし！じゃあ移動しよっか。歩ける？ゆっくりでいいから」

「う、うん」



裾を踏まないように一歩、また一歩とゆっくり足を進める。

転ばないことを祈りながら及川くんが待つ場所へと歩いたのだった。



___________________________



真っ白なドレスを着て、バージンロードを歩く。

同じく白いタキシードを着た及川くんは、足元が覚束ない私を見て微笑みながら手を差し出してきた。



「……やっと来た」

「ご、ごめん。着るのに時間かかっちゃって」

「大丈夫だよ。それより……似合うじゃん」

「及川くんもムカつくほど似合ってる」

「褒めてるんだよね？？」



軽いノリでそんな話をしながら、彼の隣に立つ。

そして はぁ と大きくため息をついた。



「隣、」

「ん？」

「岩泉がよかった……」

「ソレ結構悲しいんだけど」



……及川くんとここまで話せるようになったのは、あの日のファミレスでの会話があったからだと思う。

話すようになってからまだ数日しか経ってないけど……


彼はなんだか弄りやすい。

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