P.M.10:05 【宮治】 (ページ3)

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浴衣姿で手を繋いで歩くカップルを横目に焼きそばを食べる。

なんや、幸せそうな顔して……羨ましい。

Aが行くと言ってくれたら、俺らもあんな感じだったのだろうか。

まぁ手繋ごうとしたらテンパるんだろうけど。

「あのさ」

「ん？」

「知り合いって誰？」

「……クラスメイト。誘たけど断られた」

隣を歩いていた角名にそう聞かれたけど、あえて名前は言わないでおいた。

同じクラスだし、バレたら面倒やん？

「ふーん……奢ってもらおう作戦？」

「なんでAと同じこと言う……あ、」

「へぇ、Aね」

「……Aやない」

「いや今ハッキリ言ったよな」

……ちょっと口が滑っただけやし。

別に奢ってもらおうと思ったわけやないし。

ごまかすように焼きそばを頬張れば角名は Aねぇ、と呟いた。

「アレなの？好きなの？」

「……好きじゃなかったら誘わへん」

「へぇ…強引にでも連れてくればよかったのに」

「それで嫌われたら生きてけへん」

「お前は飯ありゃ生きてけるだろ」

「飯はいつでも食えるけど……Aは一人しかおらへんし」

確かに強引に連れて行くのも手だった。

でも多分彼女は来る。

散々悩みながら、慌てて来るに違いない。