最上階から君を呼ぶ【夜 久 衛 輔】

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あれから数時間が経った。

お母さんはとっくのとうに仕事へ行ってしまったし……

話す人はいないし、暇だ。

つまり今の私には寝るという選択肢しかない。


あーあ、今頃夜久くんにバイバイって手振ってるんだろうな。

そして夜久くんも またな って笑いかけてくれてたのに。


この手に刺さった点滴が行動を制限させる。

一応移動はできるけど押して歩くのはなんだか面倒くさい。

外に行けば携帯は使えるけどそこに行くまでには廊下を歩いてエレベーターに乗って…と当たり前のような過程がある。

それに今連絡したって彼には部活がある。

気づくのは夜だ、そんなに外で待っていられない。



「……はぁ」



暇だ。

夜久くんと出かけた日のことでも思い出そうかな。

…なんて考えたけど何回も、何十回も思い出したからかその映像は物凄いスピードで流れていく。



「……やっくん、」



誰もいない病室で一人、彼の名前を呟く。

そしてゆっくりと目を閉じた。

瞼の裏には彼の笑顔が映っていて……


…やだ、もう。

ますます会いたくなるじゃん。

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