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『茂庭くんは〜、私の家来ね！』



十年くらい前のことだろうか、ふとこんな言葉を思い出した。

今思えば滅茶苦茶偉そうで失礼な言葉を口にしたものである。

小さい頃の私は家来に守られるお姫様とやらになりたかった。

お花屋さんでもなくケーキ屋さんでもなく、お姫様。

“茂庭くん”とは小さい頃によく遊んだ男の子で、優しくで全く怒らなくて…

あぁでもちょっと心配性だったかな。

私と同じくらいの目線に、彼はいたんだ。

中学に入ってから全くと言っていいほど会わなくなったんだけど……



「……え、」
「あっ」



高校に入って三年目、目の前に彼は現れた。

烏野の制服を着た私と伊達工の制服を着た茂庭くん。

癖っ毛と大きな猫目は今と変わらず、雰囲気が大人っぽくなっただけだった。



「茂庭くん、だよね？」

「うん、やっぱりAだった」



そう言って笑う顔は昔と変わっていない。

それは帰り道の事で、少女漫画のように本当にバッタリと角で出会っただけだった。



「わー、変わってないね！あぁ、でも背がすごく伸びたのかな？」

「Aは………」

「…うん、わかってる。私が童顔なのも変わってないのもわかってるから、なにも言わないで！」



私を見てなにを言おうか考えているのだろう、茂庭くんは口を開いたまま固まってしまった。

私の変化なんて背が少し伸びたのと、髪が長くなったことくらいだろう。

そう言うと彼は慌てたように話し始めた。



「いやいやいや！えっと……ちょっと、大人っぽくなったかな？」

「ちょっと…」

「あ、いや、だいぶ！だいぶ大人っぽくなったよ！」

「無理しなくていいよ…」



はははと力なく笑うと茂庭くんは 違うんだって！ とオロオロし始める。

…茂庭くん、見た目は変わったけど中身は変わらないのかな？

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