8月31日のこと ページ1
リュックを背負ったまま、アイス片手に俺の後ろをついて歩く姿はどう見ても高校生には見えない。
音駒の制服を着て初めて高校生だとわかる、それくらい彼女の見た目は幼かった。
夕方までテスト勉強に付き合い、帰りは 遠回りしよう と誘われた挙句アイスをせがまれ今に至る。
「…歩くの速い？」
「え、別に？」
「今小走りなってたぜ」
ローファーが地面に擦れる音はなんとも独特なもので、それに気づき速度を落として振り向けばキョトンとした顔をしている。
ただの木の棒を持ってる俺に反して彼女のアイスはまだ半分残っていた。
「うそ、気づかなかった」
「へぇ…なんか子が親を追ってる感すげーな」
「ちょっと！それチビって馬鹿にしてる！？」
おい！と怒るAの頭に手を乗せ謝ればグーで背中を殴られた。
痛くないけど。
「怒んなって。明日も勉強教えてやるから、な？」
「…あとアイスも」
「まじか」
拗ねたような顔でそう言われ苦笑いしつつ わかった と言えばわかりやすく目を輝かせる。
……この笑顔に、めっぽう弱い。
そもそも彼女は俺に頼りすぎなのだ。
何かあれば 黒尾助けろ と呼ばれ解決すれば可愛らしい笑みで ありがとう と言われる。
素直で、人任せで、少しわがままで…
そんな見た目も中身も幼い彼女を好きになるのにそうそう時間はかからなかった。
「…あ、黒尾」
「ん？」
エナメルバッグの紐を引っ張られ足を止めると掲示板を見ているAが目に入る。
つられるようにしてそっちを見ると花火大会についての張り紙が貼ってあった。
「花火大会だって」
「あー、今年最後のやつだな。多分」
明日から9月、季節的に言えば秋。
今年最後の花火大会はさぞかし人で賑わう事だろう。
「……行く？」
「…え」
バッグの紐を掴んだまま小首を傾げ、可愛らしく 行く？ と聞かれ思わず固まった。
頭の中で返事を考えている間Aは溶けているアイスに気づき必死に食べている。
「…行くの？」
「うん、行こうよ」
口の端にアイスをつけたまま頷き、最後の一口を食べるA。
ペロリと口元をなぞる赤い舌に釘付けになった。
満足そうな顔をした後、もう一度張り紙を見つめている。
「……高校生活の夏、終わっちゃうんだね」
「…そだね」
「黒尾といられるのもあと半年か」
アイスの棒片手に彼女は意味ありげにそう言った。
その言葉に情けなく黙ってしまう、
そんな夏の日の事だった。
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ビーーグル(プロフ) - 燐さん» 両片想いだったら超もどかしいなって考えつつ書いてました！！あと半年かぁは卒業を意味してますね、はい！ (2017年11月4日 22時) (
レス) id: 6c5d4b22b2 (このIDを非表示/違反報告)
燐 - 黒尾さんの面倒見の良さいいですよね！そして、幼い容姿に黒尾さんに頼ってる感。子が親を追ってる感な夢主さんって黒尾さんじゃなくてもかわいいと思ってしまう！！卒業を意味してるのかなと思いつつも気になるのは最後の一言ですよね。 (2017年11月4日 20時) (レス) id: 6aa42038d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ビーーグル
| 作者ホームページ：twitter:@chichichi1208
作成日時：2017年11月4日 10時
