リトルキャンディー (ページ5)

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◎春が来るまで、あと少し fgkt ページ5

眠い。あぁもう疲れた。帰りたい。
くぁ、と大きなあくびをひとつして、楽屋の机に突っ伏す。

窓の外から見える景色には、もう雪はほとんど残っていなくて。
あぁ、もう春になるんやなぁ。
せやから眠いのかもしれんな、春は眠いみたいな言葉あったよなぁ。
あんまよく覚えてへんけど。

「ふぁあ…」

あかん、眠たい。疲れた。
昨日はあんまり寝れんかった。おれは寝ることが1番幸せやのに。まぁ、1日くらいええけど。別にええけど、どうもいらいらしてしまってかなわん。それもこれも、あれのせいや。

「こたちゃ～ん、なぁおんぶしてぇ？」
『またぁ？別にええけど…』

ずるい。なんやねんあれ。
ここ楽屋やって知ってる？なぁ、島動画かなんかしらんけど。
ほんま腹立つわ。

なんやねん、あの2人は。
ずるいわ、おんぶしてぇじゃないねん。
するこたろもこたろや。すんなや！

まぁ、あの二人はクラスやって同じやったし、特別な意味はないってわかっていても。

嫌なのに、嫌なはずやのにちらちらとこたろの方を見てしまう自分がほんまにいやや。

楽しそうに笑ってて、うわ、その顔好きや。新しい髪色も似合ってて、さらさらの前髪が目にかかって…

あ。

「こっち見んなや」
『えぇ～』

目があった。どくんと心臓が跳ねて、ドキドキして、恥ずかしくて目をそらしてしまう。

あーあ、俺なにやってんねやろ。
こう言うことが言いたいわけやないのに。
ずるい。俺やって、俺やって、こたろに甘えたいのに。
モヤモヤしているうちに名前が呼ばれて、撮影の時間になってしまった。

:
あかん。集中できひんかった。
スタッフさんからも、『なんか機嫌悪いのかな』とか言われてた気ぃする。
そんなに態度に出るんやろか、おれは。

なんかもう今日はあかんわ、上手くいかん。ちゃんとせな、脚引っ張ってる場合やないのに。

はぁ、とため息をついてふと顔を見上げると、こたろが心配そうな顔でこっちを見とる。

ごめん、勝手にもやもやして、撮影も押して、
でもおれは、

心のなかで言い訳をしながら、ぼーっと突っ立ってたら、こたろがこっちに向かってきた。

「…なんや」
『ふうさん、一緒に帰ろ』
「…別にええけど」

一緒に帰るなんてまぁ、いつものことなんやけど。
いつもは俺から言うから、少しびっくりしたというか、まぁ嬉しいというか。
また明日とみんなに頭を下げて、2人で楽屋を後にした。