ばいばい、ネバーランド【約束のネバーランド】

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物音がして目が覚める。こんな時間に外から入ってくるのはママくらいしかいない。そう考えた僕は、寝たフリをしながら様子を伺う。

「あら、ノーマン.....？」
案の定、ママの声が上から降ってきた。どうしてここに？ とママは独りごちたあと、納得したように「Aね.....」と呟いた。その声からは確かに、僕らが真実に気づく前のあの温もりを感じた。

そしてふふ、と優しく笑ったあと、Aの手を僕の裾から離し、代わりにAのお気に入りである、猫のぬいぐるみを持たせた。


こんなに優しい声なのに。こんなに温かい笑みを零すのに。ママが、敵だなんて。──どこかでまだそんな甘い考えをする僕がいる。ママは僕らのことを、どう思っている？


「ノーマンもこのままでは風邪をひいてしまうわね」また、ママは呟いて──すっとかがんだ。
それからママは僕のことを抱き、僕を寝室まで運んだ。


起きていることを気づかれたのか気づかれていないのかは、僕にはわからない。

なんだか体が重くなって、深く考える間もなく寝てしまった。


✱

【No side】

「あ！ ぬいぐるみ直ってる！」
第一声はそれだった。Aは昨日どうやって眠ったのか、イマイチ覚えていない。でも昨日の夜はこのぬいぐるみをママが直してくれていたので、なかったはず。となると、ママが寝ている間に置きに来てくれたのだ。

「おはようA。ぬいぐるみ直ったの？」
「うん！ よかった.....」
Aが安心したように言うと、エマは笑った。
「Aって、怖いこととか悲しいことがあると絶対にそのぬいぐるみを抱きながら寝るよね」

可愛い、と笑うエマにやめてよ！ と赤くなるA。もう10歳になるのだが、未だにぬいぐるみ離れが出来ないことは、自分でも少し気にしているのだ。

「今回のは、ドンのせいだよ」
頬をふくらませると、ごめんごめん！ とエマがまた笑った。


カランカラン。また鐘の音がする。

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