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Story 1 〜The Chamber of Secrets〜 ページ3








 人を夢から現実へ引き戻すものはふた通りある。ひとつは水底から掬い上げられるようにゆっくりと目が覚めていくもの、もうひとつは暗い部屋に蝋燭の炎を灯したかのように唐突に覚醒するものである。

 この日、宿の一室では一人の少女が眠っていた。だが彼女は突然、弾かれたように跳ね起きると周囲を見回した。窓からは朝の陽光が差し込み、質素な部屋に僅かな温もりを与えている。誰かの声を聞いたわけでも、音を耳にしたわけでもない。それなら薄暗い夢の世界に炎を灯したのは果たして何だったのか。

 やがて少女――Aはベッドから降りて身支度を始めた。癖のないミディアムの黒髪で、後ろ髪はうなじのあたりで縛られている。彼女の顔で普通と違う点は瞳だった。琥珀色(アンバー)の瞳は光の加減で金色に見えることもあるが、Aの場合はそれとは違い、紛れもなく『黄色』なのである。まさに怪奇小説に登場する怪物の目を表現するのに打ってつけだろう。小説でも絵でも暗闇に潜む怪物を描写すると大抵が黄色の目を不気味に光らせているものだった。

 Aは親の顔を知らない。生まれて一年も経たぬうちに母親の手でロンドンの孤児院に預けられ、九歳になるまでは自分が魔法使いだということも知らなかった。母親は娘を孤児院に託した後、死喰い人の友人を守るために闇祓いと戦って命を落とした。Aの両親についてもう少し詳しく説明するには、過去に遡らなければならない。
 





 Aの母――ヘザー・アインスヴァルトは聡明な女性だった。純血の家系に生まれ、純血至上主義という素晴らしい教育を受けた彼女は高尚な先祖を裏切ることなくスリザリン寮に組み分けられた。美しい黒髪に冷たい灰色の瞳。特別美人というわけではないが、独特な魅力に惹かれる者は多く、ヘザーは寮問わず注目された。
 
 トム・リドルがホグワーツの生徒だった頃、カルーナは教師でありながら彼の共犯者だった。後に彼女はモーフィンとの間にヘザーを生み、その秘密は娘へ受け継がれた。

 ヘザーは五年生に上がってから様々な生物の生態を研究しては新たな生物を生み出すことに勤しむようになった。彼女の趣味嗜好を占めるものは闇の魔術と魔法生物であり、どちらも禁じられている物ほどヘザーは興味を惹かれた。

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真昼 - 私もスリザリンが一番好きです!ですから、サラザール・スリザリンの子孫でとても嬉しかったです!続きが楽しみです。最後まで応援しています(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾ (2023年2月25日 14時) (レス) @page2 id: 3174c03de1 (このIDを非表示/違反報告)
闍弥嵩 李(プロフ) - ウリンさん» ありがとうございます! 私もスリザリン大好きです! 他の三寮と一線引いたあの独特な雰囲気が良いですよね♪( ´▽`) (2022年8月18日 7時) (レス) id: d43cc1ea1d (このIDを非表示/違反報告)
ウリン(プロフ) - とっても面白いです!個人的にスリザリンが大好きなので嬉しい…これからの展開が楽しみです。1ページに内容がぎっしりと入っていて満足感が半端ないです。応援してます! (2022年8月17日 22時) (レス) @page8 id: 34bb7b30de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:闍弥嵩 李 | 作成日時:2022年2月16日 10時

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