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食事というより、宴だった。皆が笑顔でお父さんの思い出話をしてて、酔った人が暴露みたいなことしてて、段々気まずくなって、抜け出した。番長と一瞬だけ目が合ったけど、何も言われなかった。

『はぁ……』

ズキズキと痛む頭にこめかみを抑える。
何がお悔やみ申し上げます、だ。結局は皆、お父さんが死んだことなんかどうでも良くて、お酒が飲みたかっただけだった。

『何なん、それ…』

「……実はね、わしのヒーローじゃった」

『えっ』

いつの間にか隣にいたのは、貴浩くんだった。ストン、と隣に座り、んふふと笑った。

T25「聞きたい?」

『うん』

話している貴浩くんは、懐かしそうにしていた。まるでアルバムを見ながら話しているような。
お父さんはピッチャーなのにクリーンアップに入っていたとか、今の自分のバッティングフォームはお父さんの真似だ、とか。
最後にこう言った。

T25「何で、実が死なにゃあいけんかったんじゃろうか」

抱きしめられた。何も言えなかった。しばらくした後、頭を撫でながら言われる。

T25「あがいなところじゃ、泣けんよね」

『パパは……ううん、お父さんは、”自分に出来る事をやりにいく”言うて、そのまま帰ってこんかった』

段々と鼻の奥がツンとしてきて、声も湿り気を帯びてきた。貴浩くんの手は頭に乗ったままだ。

『お父さんは優しいけぇ、おおかた、お年寄りの人やらの非難をてごしとったんじゃ思う。この先、もしお父さんに命を救われたって人に出会うたとき、私は素直に接することが出来ん気がする』

貴浩くんは、そやね、と言った。

T25「わしもそうかも知れん……でも実は、そがいな人じゃけぇ」

2人して、しばらく声をあげて泣いた。はたから見ればカオスな状況だったに違いない。

『ちゃんと泣いてくれんさったの、貴浩くんと番長だけ』

お互い真っ赤な目が合い、どちらからともなく笑い出した。
貴浩くんの笑顔が可愛くて、カッコいいなって思ったり。ドキドキしてるのは、きっと気のせい。

T25「泣いて泣いて、実の分まで歩きださにゃあね」

前を向かなきゃいけないと思った。3日後には、横浜に戻らなきゃいけない。お父さんは自分に出来る事をやって、命を落とした。

じゃあ。
私に出来る事って、何?

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きまぐれ(プロフ) - リュカさん» リュカさん!ありがとうございます! (5月22日 16時) (レス) id: 43ec8f9ef2 (このIDを非表示/違反報告)
リュカ(プロフ) - 応援してます! (5月19日 17時) (レス) id: 56c473763c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きまぐれ | 作成日時:2023年5月14日 10時

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