青いエンジェル (ページ28)

今日:139 hit、昨日:203 hit、合計:65,133 hit

27 ページ28

『じゃあ私、宏斗くんのとこ行くんで』

28「あっ、Aさん！」

『惜しかったね～あともう少しだったのに』

28「も～ほんとに悔しいです！」

惜しかった、というのは試合内容の話ではなくて。
むしろ彼はよくやってくれた方。あのトラウトから三振を奪うなんて思ってもみなかった。

『お酒は21歳から……厳しいねぇ、アメリカは』

28「もぅ…これはﾊﾟｧﾝ案件ですよ！」

頬を膨らませてぷんすか怒る宏斗くん。ﾊﾟｧﾝは禁句だよ。

28「そういえば、うちの笠原さんと京田さんが、これからお世話になります」

『あー！そうね、うちからは砂田さんと成也がお世話になるから、よろしく！』

……心の中の本音は、こっちに京田さん放出して大丈夫なのかなって思ってる。こっちもこっちでショートは飽和状態だし。でも実力があるのは確かなんだよね。お互いにとって良いトレードになればいいんだけど。

28「そういえば、Aさんって野球経験者ですか？」

『ん？なんで？』

28「どうしてこの業界に来たのかなぁって。野球ファンだったとかですか？」

『んー……内緒。昔から横浜ファンではあるよ』

一部分だけ伝えて、腰掛けた椅子から立ち上がる。

WBCを通して思ったことは、改めて、私って野球が大好きなんだなって思った。
あとは、この世界で、"みんなの目線"で野球をしてみたいななんて、思ったり。

『ま、無理なんだけどね』

28「何がです？」

『こっちの話～』

きょとんとする宏斗くんにちろりと舌を出して部屋を出た。

さて、これが終わればみんなはまた、敵同士。
今年こそはという興奮と、一抹の寂しさを感じた。