青いエンジェル (ページ2)

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初めて横浜スタジアムに来たのは、3歳の時だった。両親が離婚をする直前だったからよく覚えてる。

お母さんは、「お父さんは出ないかもしれないから、行かなくてもいいんじゃない？」って言ってたけど、駄々をこねて連れて行ってもらった。テレビで見るのも良いけど、どうしてもハマスタで投げるお父さんが見てみたかったから。

『ママ、すごいね！』

「はぐれないように、ちゃんとおてて繋いでてね」

『うん！』

スタジアムの中の売店で、応援グッズを買った。タオルに帽子にユニフォーム。勿論お父さんのやつ。座席はライトスタンド。ところどころ空席があったくらいで、結構混んでいた。

「お、お嬢ちゃんは山﨑のユニフォームかい？」

ユニフォームにはちまきという出で立ちのおじさんに話しかけられた。

『パパ、カッコいいもん！』

お母さんは隣でニコニコしているだけで、何も言わなかった。
おじさんは少し驚いた顔をしたが、すぐに私の頭をわしゃわしゃと撫でて言った。

「そうか、山﨑はお嬢ちゃんの親父さんなんだな。そんじゃあ、俺らも応援頑張らないとなぁ！」

どうやら、おじさんはベイスターズの応援団らしい。

結局その日は、横浜ベイスターズの勝利だった。
両チームからバンバンホームランが出て、取り取られのいたちごっこが続いていた。9回ウラ、1点ビハインドからソロホームランで同点に追いついて、延長戦に突入。お互い0点に抑え、12回まで続いた。12回オモテ、お父さんがぴしゃりと抑えて、そのウラ、サヨナラタイムリーで勝利。すごくハラハラした。
右も左も分からなかったけど、後ろの応援団に合わせてがむしゃらに歌を歌ったし、お父さんの名前がコールされた時のベイファンたちの喜び方は今も忘れられない。

「お嬢ちゃんの親父さん……俺らは実って呼んでんだけどな。実は抑えピッチャーなんだ。ハマの守護神だな、実は。だから、ここぞというとき…1点もやれねぇって時しか出てこねぇ。絶対に勝たなきゃいけねぇ試合しか投げねぇんだ」

『すごい……パパ、すごい！！ママ、パパ応援しよ！』

「そうね。叫んだらパパに聞こえるかもしれないよ？」

お父さんは、暇さえあればキャッチボールをしてくれた。お父さんの魅力は、伸びのあるストレートとキレのあるツーシーム、らしい。

『パパ頑張れー！！べイスターズ頑張れー！！』

マウンドに立つお父さんが、一瞬だけこっちを向いて笑ったように見えた。