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春季東京都大会の初戦を突破した青道高校野球部のメンバー達は夕食後、今日行われた稲実対薬師の試合を見ていた。
2、3年はすでに食事を終えていたが、一年生は未だ苦戦していた。そんな中、
「ごちそうさまでした」
と由井が軽くお腹を押さえながら食器を片付け、寮母さんと話している。
「またあいつ二番目かよ。どんな胃袋してんだよ」
他の一年は口一杯にご飯を詰め、全く減らないご飯の量に絶望感を抱きつつ、現実逃避をするかのように由井の方に顔を向けていた。
「けど‥一番やべえのは‥」
と呟きながら一年のほとんどの目がある少年に向けられる。相変わらず緩く口角を上げ、視線を先輩たちのいるテレビの方へ向けている小柄の少年______明渡想。
1年にもかかわらず、2,3年とほぼ変わらないスピードで食事を進め、食べ終わっていた。それも2,3年が面白がって盛った大盛りのご飯を普段から浮かべている笑みを崩すことなく難なく平らげる。その小さな体のどこに入っているのかというほどの量。1年には密かに胃袋モンスターと呼ばれていた。
一年生が食事と戦っていると、テレビの前にいた倉持から唐突に声が飛ぶ。
「おい、想!お前どうせ稲実の試合のビデオいくつか持ってんだろ!持ってこい!」
話を聞いていた他のメンバーは一瞬固まる。
呼ばれた本人は気にする様子も一切なく返答を返す。
「ちょっと前のなら。…3月ごろに1日だけ外部に練習試合しに行ったみたいなんで、それなら。」
「それを早く言え!持ってこい!」
わかりました、と倉持の言葉に返事を返すと、音を立てずスッと食堂を出ていった。
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(;_;) - すごく面白いです!更新楽しみにしています(;_;) (2022年9月17日 8時) (レス) id: b0ca5f72f8 (このIDを非表示/違反報告)
あんず。(プロフ) - 男主のお話初めて読んだんですけど、主人公が素直な大物で真面目なのが可愛くて好きです!続き楽しみにしてます^ ^ (2022年9月2日 3時) (レス) id: 77b42e89a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:GM | 作成日時:2022年3月7日 20時