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「ただいま」
特別オカネモチというわけでもない俺の家は、普通の一軒家。
周りの住人は大学生の一人暮らしやら、幼児や俺と同じ年くらいの子供をもった家庭など。
うちは俺がこんなだからって浮いてるわけでもなく、意外と上手く近所付き合いをしていた。
主に、噂好きで誰よりも無意識に人をたてられた母と、
一見冷たい雰囲気を受けるクールな外見をもった優しく畑仕事が好きな父のおかげ。
あとは、妹がよく連れてくる友人のおかげで、うちは平穏に暮らしていた。
最近は妹が思春期だか反抗期だかで俺とまともに顔を合わせやしないが、それでも構わない。
俺は荷物を2階にある自分の部屋におきにいき、そしてまた1階にあるリビングへとおりた。
夕飯を温めてくれる母に軽く礼を告げ、そっと食卓につく。
【今月未明、IT企業で爆発的な支持率を得る、
キム社長が念願のクローン技術を会得したと関係者に報告していたという情報が入ってきました。】
「クローン技術か…」
「クローン？ ああ、クローンね。ほんとかしら？」
【尚、詳細の情報については現在取材をすすめております。
他局とも協力し、新たな情報を得ましたら速報でお伝えしたいと思っています。】
クローン技術。
人間ではまだ成功が確認されていない、オリジナルとまったく同じDNAをもった複製動物を生み出す技術。
母はくすっと笑いながらニュース画面を切り替えると、
俺の前に湯気のたった美味しそうな夕飯を並べてくれた。
＿＿もし、俺のクローン人間が生まれたらどうなるんだろうか。
俺と同じ顔をして、彼女なんて作って青春を謳歌して、学校の人気者にでもなれるのだろうか。
「……ばかばかしい」
俺も、他の人間も動物植物さえも、唯一の存在だからこそ生きているのに。
手を合わせながら、テレビにうつるアホみたいな顔の芸人をそっと視界の端に流した。
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作者名：Y汰 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年10月27日 21時
