FAKE n LOVE (ページ5)

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話というほどの話でもないので、あったことを簡潔に伝えた。

真っ直ぐ屋上にこようとしたら、"彼女"につかまったこと。
いつの間にかバッグを投げ捨てられ、ひたすら掃除をさせられたこと。
彼女は掃除が終わるまで、決して俺の手を掴んで離さなかったこと。
ほっそい腕のくせに怪力だったこと。
そして、掃除が終わったあとには俺を睨んできたこと。

三人は興味深そうに俺の話に耳を傾けていた。
第一声は、

「ユンギ先輩をにらめる女子なんているんですねぇ」

とナムジュンののんびりとした声だった。
それを皮切りに口々に言いたいことを言い出すコイツら。

「悪いヤツだ」とか「先輩のこと好きなんじゃない」とか「女子には優しいっすね」だとか。
べつに、今まで喧嘩をしてきただとか、誰かのことをさりげなく助けるだとか。
そんな目立ったことはしていないのにこの言われよう。

小さくため息をつき、先ほど声がしたほうに目を向けてみれば、
透き通るような青白い空が広がっていて。
それは限りなく無限大に続き、俺たちを静かに包み込んでいた。

いつしか湿っていた空気もひんやりとした空気に変わり、
俺の首を冷たい風がさらりと撫でる。

「じゃ、そろそろラップバトル始めたら？」

「あ、そうだった」
「審査員は俺とソクジンさんね！」

ホソクは、俺の手首を引っ張り無理やり立たせると、ナムジュンと向かい合わせにした。
左側にはソクジンさんとホソクが座り、今かいまかとはじまりを待っている。

「先輩、ちゃんと集中お願いしますね？」

「当たり前だろ」

＿俺の人生の生きがいは、コレだ。
自然と笑みがこぼれるのを感じながら、俺は脳裏に作詞したラップを思い浮かべ歌い始めた。