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「ねえ、」
「……え？」
授業が終わり、礼をしたっていうのに立たずにずっと頬杖をついたまま。
ちょうどそんな彼女の前の席の女がいないので、後ろむきに椅子に座り話しかけた。
伏せられていた長いまつげが静かに持ち上がると、パッチリとした瞳が俺を映し出す。
見たところ具合が悪そうでもないし、さっきの暗い表情は体調不良からくるものではなかったようだ。
「……明日の昼休み、屋上」
「昼？」
「じゃ」
「……えっ、ミンくん？？？」
伝えたい要件はクリアしたので、戸惑った顔のアイツを無視して自分の席に戻る。
相変わらずひとが寄り付かない俺の周りは不自然なくらい静かで。
それが俺にとってはこの上なく心地が良かった。
「ミンくんってば！」
……アイツが俺をおってこなきゃ。
「ミンくん、言いたいことあるんなら今言ってよ」
「だから…昼言うって」
「こ、ここじゃ言えない内容なの？」
ほんのりと頬を赤くさせ、唇を噛み締めて言ってきたアイツ。
俺が話したいことは「クローン技術に成功したキムの娘か」ってことだから、
休み時間は毎回うるさく消しゴムが飛び交うほどの動物園っぷりのここでもいいにくいだろう。
適当に、あーうんと返せば、なぜか顔と耳を真っ赤にさせた。
そして口をパクパクしながら、しどろもどろになっている。
「し、仕方ないから行ってあげる…」
「……ん」
じゃあねっと言うと、パタパタと走って自分の席へ戻ってしまった。
いつの間にかアイツの席の前の女も帰ってきたらしく、何やらコソコソとこちらを見ながら話していた。
「……なにあいつ」
意味わかんない。
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作者名：Y汰 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年10月27日 21時
