【BANANA FISH】君に憧れて。シーズン２【男主】

story74　「揃わない証拠」 ページ25

坊ちゃんと呼ばれる男を部屋へと運んだアッシュ達。



俺もみんなと同じように彼が目覚めるのを待つ。



コイツに会ったってことは、アッシュを苦しめる悲劇が起きるまで時間がない。




それに、コイツには十分に警戒しないと…。




目を覚ましたユーシスは、少し話した後博士の使っていた部屋へと俺達を案内した。



養子や父親だとか、色々並べているけれどコイツの言っていることが全て嘘なのは知っている。



でも、それを証明する為の証拠がないから皆には言えない。



今、俺に出来るのはショーターとアッシュを引き離す悲劇を潰すことだけ。



その後、アッシュはパソコンの中身を見ると言い出した。



俺は、その辺にある本を適当にあさり時間を潰す。




「Aは寝てきていいぞ。俺に付き合う必要はない」

「いや、いいよ。気になって寝付ける訳ないし」

「何か心配事か？」

「え？」



椅子を回転させ、壁に凭れて座るお俺を見るアッシュ。



何て言えばいいのか分からず、反射的のその視線から逃げる様に目を逸らした。




「また何か隠してるな」

「別に……」

「別にってことないだろ。此処に来てからどうにも様子が可笑しい」

「……。なんでもない」



ユーシスが敵なんだって、証拠も無いのに言った所で状況を悪くするだけだ。



今俺に出来る事は、アッシュとショーターにユーシスを近づけない様にすることだけ。



気まずい沈黙が続く中、コンコンと小さなノックが鳴り、姿を見せたのはユーシス。



「ジャスミン茶をお持ちしました。疲れが取れますよ」



優雅な笑顔でアッシュの机に置くユーシス。


俺は本を置いて立ち上がると、ユーシスが机の上に置いたお茶をお盆の上に乗せ直した。



「どうかしましたか？」

「アッシュはジャスミン茶が嫌いなんだよ。だから下げてくれ」

「そうだったんですか？これは失礼しました」

「それとアンタ、足音をたてないんだな」

「どういう意味です？」



笑顔を崩さないユーシスを見上げながら、俺は挑発するように口角をあげた。



「そのままの意味だけど？」

「…。私たち中国人は幼い頃から「静かに動く様に躾けられてる。って言いたいんだろ？」…ッ⁈」



苦虫を噛むように、少しだけ俺を睨んだユーシス。


おうおう、化けの皮が剥がれかけてるな。



「少し私とお話でもしませんか？Aさん」

「お話…ね」

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