バイオレットフィズ

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『浴衣、買ったんだ』







『…浴衣？』








『友達と行くの。花火大会』








『あー、いいね。俺も行こうかなー』








『会えるかもね』








『うん、見たいし、浴衣』








私も、見せたいし、浴衣。









『何色？』








『紫』








『…えっ』








目を丸くしてこちらを見る彼に、そんなに驚く事かと思いながら『なにー』と笑えばまた、彼もふにゃりと笑った。








『ねー、やっぱさ、興味ないとか言いながら、そーゆーこと？』







『はぁ？なに、意味わかんない』







『だって、なんで紫？好きなの？』






『好きなの』






『なんで』







『だって、…』







辰哉っぽくて好き、だなんて、言ったところできっと意味の全ては伝わらないのだろう。








『なんとなく』








『なにそれ』







『…好きなの？紫』







『え、俺？んー、まぁ、うん。好き』







『なにそれ』








だけど、伝わらなくても、私の胸の内だけに抱えておくのは勿体ない気がするから。






溢れそうになるのを抑えるのは、疲れるだけだろうから、ね。







『なーに笑ってんの』








『別にぃ。辰哉っぽいなぁって』







『…ん？』









『紫。濃いやつじゃなくて、淡い色のね、ちょっと青みがかった感じのやつ。辰哉ってそんな感じがするんだよね』









少し意外そうにまた目を丸くして、だけどなんだか嬉しそうに『あー、うん、ね。そっちね。そーゆうこと』と笑う。








『俺、紫なんだ』







『うん』








『だから好きなんだ』








得意そうに言うから素直に頷くのは躊躇われてふいっと顔を逸らせば、ふははっと笑う声が響いた。













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