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『ねえ、そろそろ“ふっか”ってやめない？』
帰り道、ふいに足を止めた彼が言った。
何度隣を歩いても、何度その横顔を見上げても、私はずっと、“彼”に慣れないままだ。
『なんて呼ぶの？』
『そりゃ、辰哉だろ』
少し考えるふりをして、目を逸らす。
再び歩き出せば、彼もついて来るのが横目に見えた。
『そういえばふっか、私の名前知ってたよね』
『だーからぁ、ふっかじゃなくて』
『なんで知ってたの？』
『…なんでだと思う？』
『わかんないから聞いてんじゃん』
あは、と笑う私に『んー』と翳った声が落ちる。
少しの沈黙のあと、当たり前のように繋がれた手をグイッと引いた彼が、視線を掬うように顔を覗き込んだ。
『、なに…？』
『俺、お前の目、好き』
『……は？』
『Aってさ、いつもまっすぐ前向いてるよな。初めて見た時から、ずっと思ってた』
『なに、急に』
『急じゃねーし。ずっと思ってたって』
パッと手を離すと先を行く彼が、立ち止まってくるりと振り返る。
『そーやって、まっすぐ見つめる先に何があるのか気になって、同じサークルに入ったんだけど』
『…ストーカー？』
『ふはっ、ちげぇわ。ただ、…俺には出来ないからさ。いつも遠く先を見据えてて、大人で凛としてて、カッコイイよ、お前』
…なに、それ。
…なんで名前を知ってたのって、聞いたんだよ、私。
だけど、つまり。
私が彼を認識する前に彼は私を知っていたって事で。
こうして彼が気持ちを言葉にしてくれる事に、なんていうか、なんだかちょっと泣きたくなる。
『なのに、なんで俺といると下向くの』
…ふっかが隣にいると、落ち着かないからだ。
本当に私の隣に在っていいのか、不安になるからだ。
『……私、別に何も見えてないよ』
それから、音も匂いも空気も、目で見るのでは勿体なくて、身体全部で感じていたくて、だけどそれも、少しだけ怖くて。
確かめていたいのに、そう出来ないのは、総じて、結局好きだからって事で。
素直に言葉に出来ない私を見て分かってるのか分かってないのか、『ふぅん』と言った彼の目は、やっぱり奥が深かった。
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バンビ(プロフ) - hs.さん» こちらこそです。hs.様のコメント、何度も読み返しています。いつも嬉しいコメントありがとうございます。完結遅くなってしまいましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。 (5月5日 23時) (
レス) id: 1d28bbaf6b (このIDを非表示/違反報告)
hs.(プロフ) - とても面白くて何度も読み返してます。バンビさんの小説の世界観に魅了されてます。 (5月5日 11時) (レス) id: 37efc71d63 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - ふかたつさん» ふかたつ様、コメントありがとうございます。亀更新で申し訳ないのですが…最後までよろしくお願いします。 (2023年3月29日 12時) (レス) id: bb1036ab13 (このIDを非表示/違反報告)
ふかたつ - 初めてのコメント失礼します🙇🏻♀️バンビさんの小説面白くて一気見してしまいました！このお話も大好きです！これからも更新頑張ってください！ (2023年3月28日 17時) (レス) @page27 id: 1a90f164f5 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - hs.さん» hs.様、コメントありがとうございます。お久しぶりです。だいぶお待たせいたしました…是非、最後までよろしくお願いします。 (2023年1月17日 21時) (レス) id: 8553dd7f55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バンビ
| 作成日時：2023年1月13日 21時
