スティンガー II

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「Aちゃん、最近授業出てるよね。何かあったの？」








授業に出ている事の方が珍しいなんて、そんな不良をしているつもりはないのだけど、隣の席の村上くんは嬉しそうに言う。








「んーまぁ、いろいろ」











照が謹慎処分になってたまにこうして授業に出るようになったけど、意識は全くここにはない。









たまに深澤先輩と翔太先輩に会いに出向いたり、楽しそうにはしゃぐ姿をこっそりここから眺めたり。







三人で照の家に遊びに行ったりもしている。











相変わらず私の頭は彼らでいっぱいだ。










今日もいつもみたいに眺めているけど、二人の姿は見えなくてなんだかつまらない。











「あ、そういえば康二くん、Aちゃんが最近来てくれるって言ってたよ。ハマっちゃった？」










「あぁ、うん。すごくいい人だよね、面白いし。パンも美味しい…」










「今度一緒に行こうよ」











ガタッ、と席を立つ音が教室に響く。











「……Aちゃん？」











小声で話していた私たちの声は、チョークの音や先生の声で掻き消されるほど目立たないものでも、辺りが驚いて一斉に静まり返るくらいには大きな音を立てて席を立った私に、「…どうした？」と戸惑ったように先生が声をかけた。









「…ぁ、……すみません、保健室行ってきます、」









集まる視線や村上くんの驚いた顔よりも、トクトクと加速する鼓動が私を支配していく。









照だ。













一瞬しか見えなかったけど、あの黄色い髪を見間違えるはずがない。









そのまま教室を抜けて、屋上まで走る。










でも、どうして？











昨日先輩達と会いに行った時には、今日来るなんて一言も言ってなかったのに。










待っててって言ったのは、照なのに。












「なんで、言ってくれなかったの、」









乱れた息を整えながら、扉を開ければ見えるその大きな背中に問いかける。









タン、と振り向いた彼と目が合って、吸い寄せられるように近付いてしまえばもう、離れる事は出来ない。











「言わなくても来ると思った」









「…来るよ。待ってた」










ふ、と息を漏らした彼の表情を見るのは何度目だろう。










きっと何度見たって、同じように心臓は暴れる。












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