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怯懦の独白 ページ23

君を初めて識ったのは、入学式の日。

タブレットのカメラが捉えたその姿。

モニターに目が釘付けになった。

最初は君が女子だから、それに驚いただけだと思っていた。

でも違った。

知らない世界に来て、戸惑いながらも物怖じしない、そのシルエットに惹かれたのだと。

その日から、如何にして君に近づくかしか考えられなくなった。

学年も寮も違う、そもそも知り合いでもない僕が、何故君に触れられると思うの?

こう考えている間にも、君は新しい男と接触してるんでしょ?

君の視線は僕じゃない誰かに向けられるんでしょ?

毎日が腹立たしくてならなかった。

そこにヘレナが現れた。

君以外の人間には微塵の興味も無かったけど、偶然にも彼女は君を消したがっていた。

そこで思いついた。

彼女と手を組んで、君を独りにさせること。

学園内のカメラというカメラは全てオルトの監視下にある。

だからヘレナ氏に君の情報を流すのも簡単だった。

彼女は馬鹿の一つ覚えみたいに、僕に君の虐げ方を訊いた。

気づいてた?

誰にも一線を越させなかったんだよ。

中には君を本気で怪我させようとしたり、辱めようとしたり。

そんな輩もいたんだよ?

でも僕が全員裁いたから、もう心配しないで。

そして漸く、初めて僕と君は出会った。

全てを知っている僕は、何も知らないふりをして君に近づいた。

君は頬を濡らしていた。

少し赤い瞳に初めて僕が写った。

次々溢れ出る君の体液が、雫になって地に落ちる。

もったいない程美しかったのを覚えている。


『恥ずかしいところ見られちゃいましたね』


『ってことがあって!酷くないですか!?』


『ごめんなさい…付き合ってもらっちゃって』


会ったばかりの僕に、全てをぶちまける君。

正直言って惚れ直したよ。

底抜けに眩しい明るさ。

差し伸べられた手を、疑いもなく取る傲慢さ。

踏み潰して壊してしまいたくなる程の愛らしさ。

君の全部がどうしようもないくらい欲しい。

君はこれから冥府に堕ちて、一生僕の隣に座るんだよ。

女神(ペルセポネ)でもなんでもない君を、君の母親は地の底まで探しに来てくれたりなんてしないから。

世界の終わりまで、君の時間も、身体も、声も、魂さえ、僕のものだから。

「ずっと一緒にいて、A氏」

横たわる頬に、小さく唇をあてる。

眠っているはずの君が、微かに頷いた気がした。

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糸杉


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Matyu(プロフ) - るいさん» コメントありがとうございます〜どうかグリムを抱きしめてやって下さい!最悪のシュラウド、最高ですよね。 (4月27日 7時) (レス) id: 804f68e71a (このIDを非表示/違反報告)
るい - グリムー!!!!ひとりぼっちじゃないよー!!!監督生がいるよー!!!でもイデア先輩も最高だなー (4月27日 5時) (レス) @page25 id: b34786daa2 (このIDを非表示/違反報告)
Matyu(プロフ) - 水豚さん» とても光栄なお言葉です!ヤンデレ風味のシュラウド、良いですよね。こちらこそ、読んでくださりどうも有難うございました。 (2月26日 17時) (レス) id: 7b0c655599 (このIDを非表示/違反報告)
水豚 - やばい、性癖に刺さったァ、全私が喜んでいる…。こんなに素晴らしい小説、タダで読めるなんて…。ありがとうございました。 (2月26日 2時) (レス) @page25 id: 1de28648f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Matyu | 作成日時:2024年1月12日 19時

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