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幽明異境の音 ページ22

「ねえ、まさか本当に気づいてないの?」


嫌な汗が背中を伝う。


『せん…ぱい?』


指先の痙攣を感じる。


「僕だよ、全部」


そう言って、貴方は微笑する。


「フェイク映像を作ったのも。君の悪い噂を流したのも。君を孤立させようとしたのも」


そう言って、愛おしそうに私の頬を撫でる。


「ヘレナ氏は馬鹿だから、君を壊せない。だから天才が協力したわけ」


『…そんな、でも、だって…!味方って…!』


「勿論味方ですが?君の唯一ですが?でも、なのにA氏は僕じゃないモノを優先するじゃん」


逃げなければ。


この人の近くにいてはいけない。


本能が警鐘をならした。


この人は、異常だ。


『っいや!』


「逃げるの?」


突如として身体に激しい電流が駆け巡った。


『う“っ”!!!?!』


痛みと熱に耐えかねてうずくまる私。


一体どうして、こんなことになってしまったの?


後悔しようにも、何処で間違ったのかがわからない。


辛うじて開いた片目で見上げると、無邪気な笑顔が覗いた。


『オルト…くん…?』


「もう、兄さんたら!バラしちゃダメだよ!」


「…ごめん。ちゃんと”後始末“はするから、さ」


逃げなきゃ、逃げなきゃ、力を振り絞って伸ばす手も空を切る。


「まだ動けるの?凄いね!」


『う“ぁ”っ!!』


再び体を走る電気。


全細胞が焼き切れるかの様な痛み。


「忘れないうちに、終わらせとこうか」


そう言ってうずくまる私を強引に壁にもたれかけさせ、顎を持ち上げる先輩。


「はい、あーん♡」


私の顔の前へ何かを摘み上げた。


『い、いや!やめて、やめて下さい、家に帰して…!』


「“帰る”、その行為は禁止されています。」


「食べ物は粗末にしちゃいけないんですぞ?」


力の抜け切った私の口をこじ開け、先輩の指が侵入してくる。


強引に舌の上に乗せられたそれは、小さくて、甘酸っぱくて。

『柘榴って…まさか』

大正解、そう言って先輩は笑う。

「オルト、打っちゃって」

「了解!Aさん、ちょっと我慢してね!」

注射器のような物を手にして笑う。


これを打たれるわけにはいかない。


戻れなくなる。


『っやめて!どうしてこんな、酷い…やだ、やだやだやだ』


どれほど全力で暴れても、二人の力は見かけよりはるかに強く、意味がない。


『誰か助けて…お願い、グリム。助けてよ…、お母さん…!』


針が皮膚に挿入され、液体が私に注入された。

怯懦の独白→←000


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糸杉


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Matyu(プロフ) - るいさん» コメントありがとうございます〜どうかグリムを抱きしめてやって下さい!最悪のシュラウド、最高ですよね。 (4月27日 7時) (レス) id: 804f68e71a (このIDを非表示/違反報告)
るい - グリムー!!!!ひとりぼっちじゃないよー!!!監督生がいるよー!!!でもイデア先輩も最高だなー (4月27日 5時) (レス) @page25 id: b34786daa2 (このIDを非表示/違反報告)
Matyu(プロフ) - 水豚さん» とても光栄なお言葉です!ヤンデレ風味のシュラウド、良いですよね。こちらこそ、読んでくださりどうも有難うございました。 (2月26日 17時) (レス) id: 7b0c655599 (このIDを非表示/違反報告)
水豚 - やばい、性癖に刺さったァ、全私が喜んでいる…。こんなに素晴らしい小説、タダで読めるなんて…。ありがとうございました。 (2月26日 2時) (レス) @page25 id: 1de28648f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Matyu | 作成日時:2024年1月12日 19時

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