TA-9 ページ47
．
目の前で起こったことが信じられない。提案したのは私だが、まさかこんな契約が成立するとは――いいや、してしまったのだ。
「二人とも、ごめん」
出した声は、情けなく震えていた。
「私が、契約なんて言ったから……」
優しい心を持っていた森村さんを、悪魔にするよう九坂をそそのかした。森村さんの魂を回収できなかった天馬はもちろん、剣城も、ただ九坂を連れ戻すだけではなくなってしまった。
悪いのは私なのに、ペナルティを受けるのは天馬と剣城だ。九坂と森村さんも、きっとつらい思いをする。
「……本当にごめん」
謝って済むことではないのはわかっている。しかし、今の私にできることは、これしかなかった。
「A、それは……」
「お前は何も悪くない」
剣城が、天馬の言葉を遮った。私と天馬の視線が剣城に集まる。彼は難しい顔をしていたが、私と目が合うと、片方の口角を上げていびつに笑った。――剣城らしくない、悪魔としての笑い方だ。
「森村に契約を持ちかけたのは九坂だ。二人がやったことだ。Aは関係ない。そうだろ、天馬」
「えっ」
突然話を振られた天馬は、しばらく返事に迷っていた。やがて、仕方がないといったような表情で「わかったよ」と呟いた。
「剣城がAを悪くないって言うなら、俺はAの懺悔を受け入れる。A、君を
「でも、森村さんが……」
「好葉を止められなかったのは俺の責任だから、Aがこれ以上、自分を責める必要なんてない。それに――」
天馬は微笑んで、私の手をそっと握った。
「――クリスマスの夜だから」
天馬に手を引かれ、イルミネーションの中へ足を踏み入れる。どこからか流れてきたクリスマス・ソングに合わせて、天馬はくるくるとステップを踏むかのように歩いた。
「天使がああ言ってるんだ。気にしなくていい」
いつの間にか、隣には剣城が立っていた。見上げると、彼は私の顔をちらりと見て目元を和らげた。
「もし、今日のことが原因でお前が地獄に落ちるようなことがあれば、俺が歓迎する」
「……おいしいお酒と料理を準備して？」
「ああ」
「部屋の飾りつけも？」
「……考えておく」
せっせと部屋を飾りつける剣城を想像して、思わず口元が緩む。
ふいに天馬が道を引き返し、私と剣城の手を掴んだ。天馬に引っぱられるまま、私たちは光の中を駆けた。
．
end.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 17人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるま | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年10月13日 0時
