TA-7 ページ45
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午後六時。九坂の匂いを追って、駅前に移動した。イルミネーションに照らされた大通りに、私は
九坂は、人間の私より、自分を追っている悪魔を警戒しているはずだ。ならば、私一人で動いたほうが、九坂と森村さんに近づける。剣城と天馬には、離れたところから見張ってもらっている。
大通りを行ったり来たりしていたが、九坂と森村さんはまだ見つけられない。姿を変えているのか、駅前と言っても反対側の出口だっただろうか。もしかしたら、もう他の悪魔に見つかってしまったのかもしれない。焦りが募った私は、注意力が散漫になっていて、前から歩いてきた人とぶつかってしまった。
「あっ、すみませ――」
咄嗟に顔を向け、言葉を失った。ぶつかった相手が、九坂だったからだ。
「アンタ、さっきの……」
九坂は私を見て咄嗟に後ずさったが、その足取りはふらふらとおぼつかない。よくよく見ると、隣にいた森村さんに支えられて、やっと立っているような状態だった。森村さんは、不安そうな顔で私を見上げていた。
「あっちのベンチに座りましょう」
森村さんとともに九坂を支え、人気の少ないベンチに座らせる。額には汗をかいていて、顔色も悪い。森村さんは小さな手で、九坂の空いている手をきゅっと握った。
「怪我をしてるの？」
たずねると、森村さんは首を横に振った。
九坂が額に汗を流しながら口を開く。
「ちょっと疲れただけだ。なぁ、アンタ……ええと……」
「AAです」
「その名前、聞いたことあるぞ。確か、あの剣城を女にしたっていう……」
「誤解を招く言い方をするな」
低い声に振り返ると、今まで見たこともないくらい険しい面持ちの剣城と、心配そうな表情の天馬が立っていた。すると、森村さんが九坂をかばうように剣城の前に立ちはだかった。
「く、九坂くんを、連れていかないで……！」
今にも泣き出しそうになりながら、震える声で剣城に向かってそう言った。剣城が鋭い目つきを保ったまま一歩近づくと、彼女は「ひいっ」と悲鳴を上げた。
「A、お前の言う通りだ」
「え？」
「九坂は移動するので手一杯だ。森村をどうこうできる力は残っていない」
いくら悪魔の羽があるといっても、一日中逃げ回っていれば力を消耗する。森村さんを守りながらでは、なおさら。
私は、森村さんが騙されていなかったことにも、九坂が騙していなかったことにも安堵した。
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作者名：はるま | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年10月13日 0時
