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ここから先は話し合いの時間。ということで、剣城は冷蔵庫から賞味期限間近の牛乳を取り出し、三人分のミルクティーを作った。
「剣城、“磯崎を信じるな”って言ってたよね。あれ、どういう意味？」
私はずっと、あのときの言葉に違和感を持っていた。
彼は「契約するな」ではなく、「信じるな」と言ったのだ。単に私と磯崎の契約を阻止したいなら、前者でいいはずだ。
剣城は、話すときに慎重に言葉を選ぶ。伝えるべきではないことと、伝えるべきことをわきまえ、できるだけ簡潔に話そうとする。だからこそ、今回は違和感があったのだ。
「……死者の記録を確認した」
「死者の記録？」小首をかしげると、天馬が「生きてる間だけじゃなく、死んだあとの記録も残るんだ」と説明した。
「天国と地獄のどちらに行ったか、天国でどんなふうに過ごしてるのか、地獄でどんな罰を受けているのか、自動的に保存される。生きてる間ほど詳細じゃないけどね」
「へえ……」
「でも、どうやって確認したの？ 地獄には戻ってないんだよね？」
「ああ。だから知り合いに確認を頼んだ」
剣城が「知り合い」という単語を出した瞬間、天馬が何かに気づいたように眉をひそめた。そして、それを見た剣城は、ばつが悪そうな表情を浮かべている。
「白竜だね？」
「えっ、白竜？ なんで？」
「え？ A、白竜知ってるの？」
「う、うん……」
「どこで知り合ったの？ ここに来たの？」
「ここには来てないけど……彩花の件でね、ちょっと会って」
「俺、聞いてないよ……剣城！」
天馬と白竜はどちらも天使だから、この二人が知り合いなのはおかしなことではない。
だが、剣城と白竜は一応対立関係にあるし、以前会ったときは空気がピリピリしていた――その中に、一種の信頼のようなものも見えたけれど。
天馬は彩花の件が自分に共有されていないことか、あるいは白竜自体か、とにかく何かが気に入らないようで、子どものように拗ねてしまった。
「……修羅場？」
「そういうのじゃない」
「修羅場って何？」
「天馬、あとで教えてやるから静かにしてくれるか」
二人分の視線を受け止めた剣城は一度咳払いし、「その……」と若干ぎこちなく言葉を続ける。
「白竜によれば」
やっぱり白竜だった。
「地獄から抜け出した死者は一人もいないそうだ」
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作者名：はるま | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年10月13日 0時
