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食べて、少し飲んだ。チーズフォンデュの後片付けを終えてソファに戻ると、ふと部屋の電気が消える。
天馬が少年のような声でハッピーバースデーの歌をうたう。その姿が生前の母と重なって目頭が熱くなり、咄嗟に下唇を噛んだ。
剣城がケーキをテーブルに置いた。ロウソクの灯りがぼんやりと二人の顔を照らす。
「おめでとう、A」
「おめでとう！ ほら、火消して」
ふっと息を吹きかける。一瞬部屋が暗くなったが、すぐに剣城が電気を付けた。
それはイチゴののったホールケーキだった。
「二人で作ったの？」
「うん。でも、スポンジがうまくいかなくて。結局スーパーで買ってきた」
天馬が眉を下げて言った。私は「嬉しいよ」と返し、携帯でケーキの写真を撮る。
「私、ホールケーキ食べるの初めて」
「そうなの？」
「お母さんと二人じゃ、食べきれなかったから」
剣城がホールケーキを切り分けた。正直、三人で食べるにしても大きいが、天使と悪魔の胃袋は人間とは違うから大丈夫だろう。
「いただきます」
軽いスポンジとしっとりしたクリームと、それからイチゴの酸味。シンプルで食べやすく、懐かしいような気さえした。あっという間に一ピース食べ終える。
「ああ、美味しかった！ ごちそうさま」
「待って、A。ケーキで終わりだと思ってない？」
「え？」
「誕生日にはプレゼントがないと！」
天馬が指を鳴らすと、私の目の前にクリーム色のギフトバッグが現れた。バッグの口を閉める真っ赤なリボンは、金色のラメが室内灯を反射している。
「あけてあけて！」
その声に急かされ、私はリボンをほどいた。
最初に取り出したのは、長細い箱だった。かぱ、と蓋を開けてみると、中にはタンブラーが入っていた。色は深いブラウンで、小さな白い文字でロゴが入っている。
「それは剣城が選んだんだよ。Aは映画観るときいつも飲み物淹れるから、それがいいだろうって」
剣城を見上げると、彼はいつもよりずっと柔らかい笑みを浮かべていて、くすぐったい気持ちになった。
袋はまだ膨らんでいる。奥に手を入れてみると、ふわふわとした感触があった。
「そっちは俺から！」
中から顔を出したのは、ヒツジの抱き枕だった。抱えておくにも良し、枕として使うも良しのサイズ感だ。
「ソファで寝転がるときにちょうどいいかなって。人間は眠るときにヒツジを数えるんでしょ？
……A？」
天馬が私の顔を覗き込む。
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作者名：はるま | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年10月13日 0時
