【イナGO】迷える子羊を愛せよ上【天使と悪魔パロ】 (ページ9)

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episode2 天使の仕事

　二人が家にいる時間はまちまちだった。一日ソファに身を預けていることもあれば、遅くまで帰らない日もある。ふらっと消えて、そのまま数日帰ってこないこともあった。本人たち曰く「休憩時間が一定ではない勤務体制」らしい。

「天使のノルマって具体的に何なの？」

　たずねると、チョコレートをつまんでいた天馬はきょとんとした顔でこちらを向いた。――食事は「必要がない」というだけで、「不可能」ではないのだ。

「気になるの？」
「うん」
「一番多いのは、魂を天国に案内する仕事だよ」
「私がされたアレね？」
「そう。あとはちょっとした奇跡を起こしたり……」
「奇跡？」

　首をかしげた私を見て、天馬は「例えば」と言いながらタブレットを操作する。

　画面に映し出されたのは、今週末に放送する『間一髪！世界のおもしろ衝撃映像百連発』というバラエティ番組の予告映像だった。
　横断歩道を渡っている男性が、突然歩みを早めたかと思えば、その男性のすぐ後ろをコントロールを失った様子の車が通り過ぎ、そのまま街灯に激突した。

「こういうの」
「そうだったんだ……」

　感心したのもつかの間、私には一つの疑問が浮かんだ。

「だったら、私の事故は？防げたんじゃないの？」
「ああ。あれはあの日がAの命日だと思ってたから、見守ってた」
「そ、そう……」
「俺たちの仕事は、寿命を伸ばすことじゃないからね。命日はあらかじめ決まってるものなんだ」
「じゃあ、私の命日は？」
「それは教えられない。機密情報だから」

「おい、天馬。風呂掃除は」

　振り返ると、腕を組んだ剣城が、風呂場を親指で指しながら立っていた。
　呼ばれた天馬は「あっ、忘れてた！」とソファから弾かれたように立ち上がった。