episode2 天使の仕事 ページ8
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雨が止んだあとも、私たちは奇妙な共同生活を続けていた。
といっても、私に二人を養う余裕などあるはずがない。にもかかわらず二人の居候を許しているのは、彼らが人間と違って睡眠も食事も排泄もシャワーも必要なかったからだ。
しかし、無償で住まわせるほど、私も聖人ではない。そこで、二人に多少の――彼らにも仕事があるので毎日というわけにはいかない――家事を任せることにした。
が、天馬は電子レンジの使い方から教えなければならない有様だったので、料理は諦めた。
代わりに、天使だけが持つ祝福の力とやらがあった。この力がすこぶる便利で、一瞬にして部屋が綺麗になり、壊れたパンプスが元通りになる。部屋とお風呂の掃除、それから皿洗いが天馬の担当になった。
一方、剣城はなかなか人間界の勝手がわかっていた。少なくともキッチンの使い方を心得ていたので、料理は剣城の担当になった。
「それじゃ、いってきます」
「待て、A」
「何？」
「弁当」
自由気ままに過ごす天馬とは対照的に、剣城が居候の負い目を感じていることは何となく知っていたが、お弁当を作り始めたときは戸惑いを隠せなかった。こんなに真面目で、今までどうやって悪魔として生きてきたのだろう。
そして何よりありがたいのは、寝室には近付かないとか、洗濯物には触れないとか、そういう人間特有の距離感をわきまえているところだった。
総括して、私たちはそれなりうまくやっていた。
「ねえ、A。ちょっと聞きたいんだけど」
ソファでスマートフォンをいじっていると、私のタブレット――使い方を教えてから彼は動画配信サービスにハマっている――を持った天馬がよりかかってきた。
「どうしてさっきまで殺しあってた二人が抱きあってキスをしてるの？」
言葉に詰まった私の代わりに、夕食の準備をしていた剣城が手元から目を離さずに答えた。
「野暮なこと聞くな」
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年9月11日 15時
