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槙田さんは、心美ちゃんが亡くなったあと数日会社を休み、そして――会社を辞めることになった。
「しばらく、実家で過ごすことにしたの」
荷物を取りに会社にやってきた槙田さんはやつれた様子で、目の下に隈もあった。
私は慰めの言葉が見つからず、ただ「ゆっくり休んでくださいね」と言うしかなかった。
チーフの提案で、送別会をすることになった。槙田さんの気が乗らないのでは、と心配したが、「簡単なものなら」ということだったので、槙田さんが会社に来る最後の日に、空いている会議室を使うことにした。
みんなから、ということで花束とお菓子を槙田さんに渡し、それとは別に個人でもプレゼントを渡した。中身はリラックス効果のある入浴剤と、ホットアイマスクだ。
「お世話になりました」
「私も、Aさんにはいろいろ助けられたよ」
まだまだ槙田さんに教わりたいことが、たくさんあった。できれば、ずっと一緒に仕事をしたいけれど、今はそれ以上に、槙田さんには自身のことを大切にしてほしかった。仕事熱心な彼女の、“仕事を辞める”という選択を尊重したい。
「行かないで」と縋るほど、子どもではない。
「いい天気で良かったですねー」
雛森さんが眩しそうに目を細めた。彼女の髪をまとめるヘアゴムの飾りが、太陽の光をきらきらと反射している。
槙田さんはプレゼントで両手が塞がってしまったので、見送りがてら彼女の荷物を持って建物から出た。会社の前では、槙田さんの旦那さんが車を回してくれていた。
「二人とも、ありがとうね」
「落ち着いたら、連絡くださいね」
「そうですよ。また三人でご飯行きたいです！」
雛森さんの言葉に、槙田さんは笑って頷いた。
心配だけれど、悲しみが永遠ではないことを、私は知っている。そうであればいいと、願っている。
槙田さんを乗せた車が、青空の下、遠ざかっていった。
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to be continued…
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作者名：春間 | 作者ホームページ：https://twitter.com/April_hrm
作成日時：2022年9月11日 15時
